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【舘神龍彦の手帳講座・2019春】手帳の根本と活用の基本 Vol.3
新年度がスタートする4月は、手帳デビューする人が多い時期。社会人としての第一歩を踏み出すフレッシュマンはもちろん、「今まで手帳をちゃんと使ってなかった」という人も手帳を使い始めることが少なくないようです。そこで、“手帳王子”こと手帳評論家の舘神龍彦さんに、手帳を使うための基本なことを全3回で解説してもらいます。
最終回となる今回のテーマは、「手帳に何を書くか。いつ書くか。」です。
Vol.1はこちら。
Vol.2はこちら。
手帳は利用可能な時間を見える化するツール
ビジネスパーソンにとっての手帳は、仕事の効率化のためのツールである。
まず手帳に書くべきは、予定であり、タスクだ。
予定はそれがわかった時点、決まった時点ですぐに書き込むようにしよう。
例えば定例の会議が毎週月曜日の9時から1時間と決まっているのであれば、半年分でも一年分でも書き込んでしまう。手書きが面倒な場合はスタンプでもいい。ただし、そのスタンプは会議の意味であることは、例えば手帳の巻頭のルールをまとめる欄をつくって、そこに明記しておこう。
それ以外のイレギュラーなアポイントや打ち合わせなども、決まった時点ですぐに記入する。
これを励行すると、利用可能な空き時間が見えてくる=利用可能な時間の見える化がなされる。念のために付け加えておけば、これはGoogleカレンダーなどのデジタルツールにも適用しうる考え方だ。
次に、それらの予定に必要な準備をいつすればいいのかを自然と意識することになる。翌週の会議に必要なのはどんな情報で、どのようにまとめればいいのか。手帳を見ることで出席者や押さえるポイントに自然と考えが及び、それを追記していくことになる。
必ず時間軸のある手帳を
こういう使い方の為には予定記入欄に必ず時間軸がある手帳を使おう。
手帳と一口に言っても、とくに週間予定欄に時間軸がないものも存在する。
あまり時間の使い方に自覚的でないのならば別だが、自分が使える時間を把握するためには予定記入欄には時間軸が入っている手帳は不可欠だ。
手帳が続かないという人の話をたまに聞くが、手帳は続けることが目的ではない。あくまでも記入することで残り時間、自由な時間を見える化し、それを活用するプランを考えるためのツールなのだ。その目的のために予定を書き、タスクを書く。
時間軸のある手帳(写真はパイロット「オーディナル」1月始まり手帳の週間バーチカル)
タスクをリストアップ、細分化、時間を見積もる
そしてタスクをリストアップしておく。タスクとはやるべき事柄のうちで、時間が決まっていないものだ。たとえば上述のような会議やアポイントは予定だが、そのための資料の準備などはタスクになる。これも、詳細について手順を決め、資料や調査の時間などそのために必要なものを書き出して準備する。これはできるだけ細かく決めておくと、実際に作業に取りかかる時に迷うことが少なくなる。また実際にやってみないとわからないことも必ず出てくる。それはその時点でメモするようにしよう。
締切も忘れずに記入し、タスクの細分化をした上で、各タスクをいつまでにどんな手順でやるかも忘れずに記入する。ポイントは締切そのものよりも、いつ着手するかを具体的な日時として書いておくことだ。
そして実行時間を決め、あらためて予定として予定記入欄に記入する。もし、時間まではっきり決められないという場合も、ざっとした流れでいいから書いておくと、あとで迷うことがない。
また、仕事のタスクには必ず押さえるべきポイントがある。
例えば動画を作成するとして、再生回数や誰に見て欲しいかなど、その動画の狙いと言うべき事柄がある。それもメモしておくとよい。そのことでそのタスクの方向性が明確になり、それに沿ったアイデアなどが思いつきやすくなるからだ。再三みなおす
手帳は記入するだけで終わりではない。再三見直すことでその力は何倍にもなる。
一例を挙げれば、何回も開きそのたびに一週間の予定を何回も見る事で、空き時間がわかる。すぐに確認できるのは安心感にも繋がる。
また、簡単に追記ができる。タスクに関することを思いついたらすぐに追記していくことで、そのタスクにとりかかるときの負担が楽になる。タスクに取りかかる前にこれを繰り返すことで、実際に作業に取りかかる時はスムースにできるようになる。
「それは頭の中でおぼえているから書かなくてもいい」という考えもあるかもしれない。だが、たとえば頭の中で作業に優先順位をつけたり、できた準備事項にチェックを入れたりすることはかなり難しいはずだ。ましてやどれが既存の事項で、新しいチェックポイントはなにかなど、頭の中にイメージとして保存して再生できる人はあまりいないだろう。仮にできたとして、その種のことに頭脳の貴重なリソースを割くのはあまりいいやり方ではないと思える。上記のようなことは紙の記録媒体に任せて、頭脳は考えることなどに集中させるのが、楽で効率的なはずだ。
いつ書くか
手帳に予定やタスクを書き込むのは上述したようにまず発生直後にすぐ書くことだ。
追記が簡単なのも手帳のメリットだ。一日中パソコンの画面に向かっている人ならば「Outlook」や「Todoist」と言ったスケジューラーやタスク管理ツールに簡単に入力ができるだろう。そして手帳ならば、すぐに開いて記入ができる。また予定に関連した事柄を細々とメモ欄に書くこともできる。それこそが手帳を使う大きなメリットの一つなのだ。
習慣化していく
これらを励行するうちに、手帳への記入や参照が習慣になっていく。さらに、予定をクリアするために必要な事柄が自ずから習慣として身についていく。これもまた手帳を使うメリットだ。同じ事はスマートフォンやパソコンの予定管理ツールでもできなくはない。ただしとくにスマートフォンだと、参照・入力にどうしても手間がかかる。ロック状態からスケジュール管理アプリを開いて、予定を参照・記入するのに短くても数秒はかかるだろう。手帳ならば、今週のページにしおりをはさんでおけば瞬時に開ける。またスマートフォンは、画面が大きなタイプであっても、表示のサイズの制約がありどうしても一覧性に欠ける。
画面の大きなパソコンであれば、一覧性も入力のしやすさも問題ないが、家庭や電車の中など、いつでも使うというわけにはいかない。
いつでも利用できて参照追記がやりやすい手帳のメリットは、ここにもある。
ノートの併用
仕事に関するタスクの詳細のメモは、手帳のメモ欄や巻末のメモページだけでは足りなくなることがある。とくに巻末のメモページはページ数が限られている。
こういう時には、以下の2つの解決策をとろう。
一つは、ノートページが多めに多数用意されている手帳を利用することだ。
たとえば、「EDiT週間ノート」(マークス)や「ほぼ日WeeksMEGA」(東京糸井重里事務所)といった製品がそれだ。これらは巻末にノートページが多めに用意されており、別途ノートを用意する必要がない。
巻末にノートページがあるEDiT週間ノート(撮影協力:銀座 伊東屋)
もう一つは、ノートを併用することだ。たとえば「能率手帳普及版」(JMAM)には、専用の補充ノートが用意されている。また、「ジブン手帳」(コクヨ)にも「IDEA」という同サイズのノートが用意されている。仕事のことはこういうノートに書いておき、手帳とともに持ち歩くのがよい。能率手帳用「補充ノート」もジブン手帳用「IDEA」もカバーの内側に収まるようになっており、予定とともに参照が簡単だ。
ジブン手帳「IDEA」(撮影協力:銀座 伊東屋)
ノートと手帳の併用のポイントについても説明しておこう。
まずノートにはあらかじめページ番号を打ち、表紙を開いた1ページ目にインデックスページを用意しておくことだ。あらかじめそれが用意された「アクセスノートブック」のようなものを使うのも一つの方法だろう。
そして、予定記入欄には、ノートの何ページに情報があるかをメモしておく。こうすると予定記入欄とノートを参照するだけで仕事の詳細がわかるようになる。
ノートは見開き2ページ単位で使うと、複数のプロジェクトを一冊で参照できるようになる。見出しをつけて、追記のたびに日付を記入しておく。色分けなどもマルチペンを使えば簡単にできる。インデックスを使えば複数項目を一冊で管理するやり方もできる。仕事のノートの使い方については、いろいろなやり方があり、それだけで一冊の本が書けるぐらいのテーマでもある。機会があれば別途解説したい。
プロフィール
アスキー勤務を経てフリーの編集者/ライター。デジタルとアナログの双方の観点から知的生産について考え、著作を発表。著書は、最新刊の『手帳と日本人』がNHK新書から好評発売中。その他、『iPhone手帳術』『ふせんの技100』『手帳の選び方・使い方 』(いずれもエイムック)、『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)、『システム手帳新入門!』(岩波書店)、『手帳進化論』(PHP研究所)、『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(枻出版社)、『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)、『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)、『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『最新トレンドから導く 手帳テクニック100』(枻出版社)、『iPhoneの凄い設定』(枻出版社)。
また、「Yahoo!Japanクリエイターズプログラム」で、文具・手帳・ガジェットの紹介や活用法について動画で配信中。
https://creators.yahoo.co.jp/tategamitatsuhiko
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