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フリクションボール "消せる"ボールペンが10周年―世界100カ国以上で愛され続ける理由とは?

専用のラバーでこすると摩擦熱で筆跡が無色になる“フリクションインキ”を採用したパイロットコーポレーションの「フリクションボール」は、“消せるボールペン”として大ヒット。もはや「フリクション=消せるボールペン」というぐらい、広く世の中に浸透しているのは間違いないだろう。世界100カ国以上で販売し、その販売数は累計19億本にものぼるという(2006~2016年)。そんなフリクションボールが日本で発売を開始してから、2017年で10周年を迎えた。

フリクション開発秘話 「メタモインキ」から「フリクションインキ」へ

フリクションボール開発の足跡をたどると、まず1975年に温度変化で色が変わる「メタモインキ」の開発に成功。当時のインキの開発者が、一晩で葉の色が変わる紅葉を見ながら、「これをインキでもできないか」と考えたのが開発のきっかけだったという。メタモインキは、「お風呂に入れると色が変わる」といったような玩具を中心に色々なものに使われていたが、当時のインキは温度変化のコントロールの幅が狭かったそうだ。

その後、次第にインキの改良を行い、2002年には、黒で書いた文字をこすると温度変化で青や赤に変わるというボールペン「イリュージョン」を発売。

そして、イリュージョン発売から3年後の2005年、ついに温度変化の幅を80°前後(マイナス20°~65°)まで拡大することに成功して、メタモインキから進化した「フリクションインキ」が誕生した。

フリクションインキは、特殊なマイクロカプセルが色素の役割を果たしており、そのカプセルに含まれる3種類の成分(発色剤・発色させる成分・変色温度調整剤)の組み合わせが摩擦熱で変化し、インキが透明になるのだという。消しゴムを使わないので消しくずが出ないし、何度でも書いて・消すが可能。フリクションのロゴには、2本の矢印がデザインされているが、これは「書いて・消して・また書ける」というのを現しているのだとか。ちなみに、商品名の「フリクション」は“摩擦”に由来するもので、これは海外でも使われている全世界共通の商品名だ。

ヨーロッパで大ヒット、日本でも“消せるペン”として話題に

「フリクションボール」は、2006年にまずヨーロッパで先行発売された。「ヨーロッパでは、小学生も万年筆やボールペンでノートをとっていて、書き間違えたらインキ消しで消す、という消す文化がありましたので、発売当初から大ヒットしました」と話すのは、現在フリクションボールを担当している同社営業企画部筆記具企画グループ渡辺直美係長。そして、翌2007年に日本でも発売された。なお、当時はまだキャップ式である。

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「ヨーロッパと違い、日本では“ボールペンは消えないもの”というのが一般常識。今でこそフリクションは消せる便利なペン、として浸透していますが、発売当初は、消せるとこんなに便利、ということをどう訴求するか手探りの状態でした」と渡辺さんは、当時を振り返ってそう話す。

しかしその懸念も杞憂に終わり、次第に認知度を高めてきた。TVで紹介された翌日に、爆発的に売れたという話を当時文具店で聞いた記憶があるくらいだ。最初に発売したのはボール径0.7㎜だったが、ユーザーの要望に応えて0.5㎜タイプをすぐに発売。2008年にはビジネスモデルの「フリクションボール ビズ」を、2009年にはボール径0.4㎜の極細タイプ「フリクションポイント04」が登場している。

フリクションボールノック登場で一気に認知度アップ!

7.jpgパイロット フリクションボール ノック 0.5mm ブラック LFBK-23EF-B



そして、2010年に待望のノック式が発売された。日本ではノック式ボールペンへの支持がものすごく高いが、やはり“書く・消す”というアクションをスムーズにできるノック式は便利だ。

「キャップ式を出した当初から、ノック式の開発に着手しましたが、発売まで時間がかかりました」というが、特殊なインキであり、粒子が通常のものより大きいので、インキが乾かないようにするのが非常に難しかったようだ。

私見だが、それまでは「インキが消せる特殊なペン」という見方が大半だったのではと思う。しかしノック式の登場によって、実用的なボールペンとして世間に完全に認知されたのではないだろうか。「ノック式の発売あたりから、バッと認知度が広がった印象です」と渡辺さんも言う。

軸のデザインも、キャップ式は他の筆記具との差別化のため、あえて派手なデザインにしているが、ノック式ではシンプルなデザインに変更したのも、「もっと多くの人に使ってもらいたい」との思いがあったからだ。

2.jpg キャップ式(上)とノック式を比較。派手なデザインのキャップ式と比べ、ノック式はシンプルなデザインだ。


3.jpgクリップをノックするサイドノック方式を採用(左)。ノックすると黄色く表示される“ノックインジケーター”がさりげなく付いている。

ペンから色鉛筆、スタンプまで シリーズのアイテムが拡大

1.jpgその後も3色ボールペンと4色ボールペンを発売。さらにはボールペンにとどまらず、蛍光マーカー、サインペン、色鉛筆、スタンプ等とバリエーションを拡大していったのは、みなさんご存じの通り。一々挙げていてはキリがないので、別表にまとめた。

特に、フリクションインキを固形にした色鉛筆が登場したときにはびっくりしたが、色鉛筆を発売したのは「子どもの頃からフリクションに触れられるように」という狙いもあったようだ。色鉛筆からカラーペン、ボールペン、そして「フリクションボール ビズ」のようなプレミアムモデルまで揃っているので、ゆりかごから墓場までではないが、いつの間にかあらゆる世代でフリクションが使えるような一大シリーズに成長しているのだ。

「今後もユーザーや使用シーンに合わせてバリエーションを広げていきたいです」と渡辺さんは言う。

フリクション表.jpg

10周年記念でリフィル1本おまけ付きキャンペーン展開!!

今年2月には、「フリクションボールノック デザインシリーズ “ブロックチェック”」(ボール径0.5㎜、税抜230円)を新発売。ボディにあしらった格子柄を、濃淡の色合いで表現し、さらに光沢とマットで仕上げた奥行きのあるデザインが特徴。「“ちょっとおしゃれに、ちょっと上品に”がコンセプトで、ロゴもゴールドにしました」と渡辺さん。軸色はピンク、パープル、ソフトブルー、ホワイト、ネイビー、ブラウンで、女性も使えるパステル系の色もラインアップしている(インキは全て黒)。

また、10周年記念キャンペーンとして、フリクションボールノックにリフィルを1本付けて発売。「フリクションはリピーターが多いので、10周年の感謝を込めてユーザーに直接的に喜んでいただける方法を考えました」と同キャンペーンを担当している営業業務部販売企画グループの新井圭課長。「多くの方に感謝をお届けたいので」と、すでに展開中の0・5㍉(全色)に続き、4月からは0・7㍉全色も用意。ちなみに、新製品の“ブロックチェック”も、リフィルを1本おまけしたパッケージで発売している。

ところで、リフィル1本付きで税抜230円という価格は、リフィル2本分の価格とほぼ一緒なので、「ボディがおまけで1本付いてくる」という考え方もできる。リフィルだけ交換して同じボディを何年も使い続けている人は多いだろう。このキャンペーンを機会に、ボディ一新するというのも悪くないのでは?

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新製品の「ブロックチェック」(左)とリフィルを1本おまけで付けた10周年記念商品のパッケージ

フリクションシリーズの詳細はこちらでチェック http://frixion.jp/

高畑編集長のひとこと

bunguou.jpgフリクションボールが日本発売開始から10年ということですが、このフリクションボールの登場は、この10年の文房具シーンの中でもっとも大きなトピックであることは間違いありません。発売からたった10年ですが、消せるボールペンという選択肢はすでにごく普通の道具の一つとなりました。「消せる」という安心感は、書くことへの抵抗感を軽減し、事務処理の効率化や未完成の思考の補助として大きな意義があります。

私も手帳に記入したり校正作業など、毎日の仕事にフリクションボールが手放せません。(ただし、公文書や郵便の宛名など、消えては困るものに対しては使用しないでくださいね。)

私の愛用は黒の代わりに緑を入れたフリクションボール3の0.38モデル。

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