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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.88 ブング・ジャムイチ押しの最新文具 その2

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんに今イチ押しの最新文具を紹介していただきました。

第2回目は、きだてさんイチ押しの「フローチューン」です。

(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2023年11月11日撮影
*鼎談は2024年6月24日にリモートで行われました。

浮遊感のある書き心地

ぺんてる1.jpg「FLOATUNE(フローチューン)」(ぺんてる)*関連記事

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――じゃあ次はきだてさんですね。

【きだて】ぺんてるの「フローチューン」なんだけど、これは発売まだ?

【他故】6月27日ぐらいじゃなかったっけ?

【高畑】今喋っている段階ではまだだけど、記事が出てる時はもう発売されているんだね。

【きだて】俺は、そもそも低粘度油性が苦手派じゃないですか。

【高畑】そうなんだよ。そのきだてさんが推してきたから気になっている。

【きだて】改めて色々と触ってみて、俺が苦手なのは低粘度油性ではなくて、「ジェットストリーム」と「アクロボール」なんだということに最近気が付いた。

【他故】ええっ、そうなの?

【高畑】苦手なのは低粘度油性じゃなくて、その2つなんだ。

【きだて】その 2 つは、今トップ2のなめらかボールペンじゃない。

【他故】まあ、そうだね。

【きだて】なんだけど、それに対してぺんてるの「ビクーニャ」が、「カルム」が出た段階で大きくテイストを変えたじゃない。

【他故】うん。

【きだて】「ビクーニャ」って、昔は最ヌルヌル油性の立ち位置だったのに、「カルム」でリニューアルしてからはだいぶ落ち着いたというか、俺にとってはすごく程よいヌルつき具合に収まっていたのよ。だから、そこでぺんてるがさらにテイストの違う油性を出してくるときたら、やっぱり気になるわけですよ。

【高畑】うん。

【きだて】実際に使ってみると、体感的には「ジェットストリーム」ほどヌルヌルはしてないけど、今の「ビクーニャ」よりちょっと軽めっていう。

【他故】そんな感じなんだ。

【きだて】すごい絶妙なというか、こういう感じの落としどころにしてきたか、という。しかもこれ、全体としてはインクでなめらかさを出しているという感じじゃないんだよね。もちろん、相当になめらか系の油性だと思うんだけれども。どう言ったらいいんだろう? コントロールしづらい、自分でも予想のつかないようななめらかさというか、ヌルつきではなくて、ある程度思った方向に転がすのがちょっと軽いなというぐらいの。

【高畑】なるほどね、言っていることがちょっと見えてきた。

【きだて】「ジェットストリーム」だと、多少筆圧強めにかけても割とズルってすべるんだけど、「フローチューン」って筆圧強めにかけるとクッと引っかかるのよ。ニードルポイントだからというのもあるのかもしれないんだけども。だけど、上手く力をかけられるようになると、めちゃめちゃ書きやすいんだ。

【他故】ほう。

【きだて】だから、ちょっと止めたいなと思ったら、筆圧を強めにグッとかけると、もう止まるみたいな。で書き出すときは、またちょっと力を抜いてやると、スルッと動き出すという。「浮遊感のある書き心地」って言っているんだけど、割と納得のいくワードだな。その浮遊感が。

ぺんてる2.jpg【高畑】そういう風な感じか。なるほどね。

――コントロールしやすいってことですか?

【きだて】今のところ、コントロールしやすさナンバーワンの低粘度油性って言える。

【高畑】なるほどね。

【きだて】今まで「字が汚い奴は低粘度油性を使うな」って言ってきたんだけど、「ただしフローチューンは良し」ぐらいには言えるなという。

【他故】そんなに?

【きだて】コントロールしやすいね。ただ慣れるまでちょっと時間かかると思う。筆圧の微妙さでだいぶ変わってくる。

【他故】へぇ~。

【きだて】使ってみて思った以上に面白かったペンということで、ちょっと今回はこれを取り上げてみたんだけど。文具王は、反応を見ていると、またちょっと解釈違うぽいな。

【高畑】違っているというか、多分書き方が違うんだよ。言っていることは、多分きだてさんが思っているのと同じもののことを言っているんだということが、今分かった気がする。「フローチューン」は、多分インクの粘性自体は、旧「ビクーニャ」よりゆるいぐらいゆるいんだよ。だから、「ジェットストリーム」よりずっとゆるいと思う。

【きだて】そうかな?

【高畑】展示会場に回るディスクがあったんだけどさ。「ビクーニャ」のディスクと普通の油性の「ドットイーボール」のディスクと、それから「フローチューン」のがあって、それぞれのボールペンと同じ粘性のオイルが入ってるハンドスピナーの上に乗っていてくるくる回っていたんだけど、「フローチューン」が圧倒的に軽く回るのね。だから「ビクーニャ」に比べて圧倒的に軽いんだよ。だから、多分きだてさんの感覚以上に緩くなっていると思うんだよね。インクの粘度自体はね。今回言っていたのは、インクにクッション剤とかが入っていて、でそれがボールの下に入るというか、ボールがその上に乗っかるみたいな感じでインクがいっぱい出る。ボールが上に乗るから「浮遊感があるよ」と言っているのね。

ぺんてる3.jpg【他故】うん。

【高畑】俺が感じたのは、展示会場で最初に書いた時に、その低粘度感がないんだよ。「浮遊感ある」っていうほど軽くなめらかかっていったら、いやそうでもないんじゃないか。どっちかっていうと、ぺんてるのゲルインクの「エナージェル」に似てるのかな、というぐらいの感じで普通に書いてたんだけど。で書いてて思ったのが、筆圧をかけると確かにきだてさんが言うみたいに全然回らない。これが筆圧ちょい抜き目である速度以上でシュって線引くと、ちゃんとボールがインクに乗るんだよ。だから、あるスピード以上でちょっと力抜いてあげるとめちゃくちゃ滑る。だから、筆圧かけてゆっくり書くと普通なんだよ。普通というか、低粘度の勝手に滑っていく感じがあんまりない。

【きだて】そうなんだよ。

【高畑】だから、きだてさんが言っていることが「なるほど」と思ったのがそれなんだよ。でも、フリクションなんかでも、ちょっと筆圧を抜くとインクが下から出てくる感じがあるじゃない。ギュッて押すとインクが止まってしまうけど、ちょっと抜くとインクがヌルッと出てくる感じがあって、それに近い感じ。ちょっと筆圧を抜いてあげて、かつスピードをちょっと上げて書く。普段より大きな文字を雑に書くみたいにすると、「こんなに軽いんだ」となる。

【きだて】そうそう。筆記体とかサインを書くとめちゃくちゃ速いんだよ。

【高畑】普通に書いているときは全然ゆっくりなんだけど、グチャグチャっていう書き方をした瞬間に、「あっ乗ってる」っていう感じになる。

【他故】ええっ!

【高畑】この間の僕のライブでも言ってたんだけど、水上スキーで水から浮き上がる瞬間ってあるじゃん。最初は水の中をズズズーッと行ってるんだけど、ある速度になるとフッて水の上に乗っかるじゃん。そういう乗る感じがあって、その乗るゾーンのところだけめちゃくちゃ軽いんだよ。きだてさん分かる?

【きだて】分かる。それはすごく納得のいく話。

【高畑】だから、そこに行ったときは、多分「ジェットストリーム」の比じゃないぐらい軽いんだよ、その瞬間は。大雑把にでかい文字を書くんだったら、すげーなめらかだけど、そうじゃなかったら、特に低粘度の浮遊感をあんまり感じないけどねっていうのが俺の感想だったのね。

――はぁ。

【高畑】だからキレイにノートを取りたい派の人、要は他故さんみたいにちっちゃい文字できちっとした文字、割とカクカクした文字を手帳に書くんだったら、別にこのペンじゃなくてもいい。このペンがめちゃくちゃ軽いって感じがしないし、きたてさんが言うみたいにコントローラーブルなのかもしれない。逆に、今度はあるスピード以上ででかい文字書いたときには、ちょっとアンコントローラーブルな感じ。ビャーっていくので。その雑な感じを楽しめる人にとっては、これめっちゃ楽しい。ちょっとスポーツ的な楽しさが俺はあるような気がしていて。

【きだて】だから、本当は低粘度油性は使いたくはないんだけど、でもこういうのも使ってみたいぐらいの人には、低粘度油性の一番面白いところだけ味わえるんだよ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】と言えるかもしれないな。そんな感じかもしれない。だから、きだてさんが遊ぶときにはちゃんと遊んでくれるけど、「キレイに書きたいんじゃー」って思っているときは。

【きだて】あんまり無茶をしないというか。

【高畑】そうかもしれないね。僕ときだてさんのベースになっている筆記するときの筆圧とスピードのレンジが違うから印象の違いがあるんだけど、多分同じことを言っていて、それの前の方を言っているのか、後の方を言っているのかっていう違いなんじゃないかな。

【きだて】そうだ(笑)。

【他故】なるほどね。

【高畑】でもね、面白いから他故さんとかには1回触ってほしいよ。

【他故】もちろん、販売されたら買いに行って使うんだけど、なんか面白いね。

【高畑】特に、筆記具に対してあれこれ使ってみて比較したりするのが好きな人に、1回使ってみての感想聞きたいっていうのはすごいある。

【きだて】ゆるいっていう話に関しては、多分インクフローをめちゃめちゃ上げているっていうところもあるよね。

【高畑】それに付いてきてインクが出てこないといけないから、かなりゆるめのインクになっていて。だから1個だけ困りごとなのは、染み込みは早いから速乾性はそこそこあるんだけど、裏抜けするので。だから、ノートを取るのにはあまり向いてないというか、メモを取るには平気なんだけど、裏抜けがすごい気になるっていう人にはあんまりおすすめしないところもある。ゆっくり書くと抜けるんだよ。

【他故】本当だ、抜けてるね。

【きだて】コピー用紙ガンガン抜いてくるよ。

【高畑】これ「MDペーパー」なんだけど、こんだけ抜けてるんだよね。だから、まあまあ抜ける系なんだよ。特に、ペンが止まった瞬間とかにドバッていうのがあるのは、初期の「ビクーニャ」でも見られるようなアールの端っこのところとかにインクがちょっと溜まりがちだったりするのもそうだし。

【他故】ああ、はいはい。

【高畑】これ、すごい面白いのは、油性っぽくない動きもするんだよね。水性っぽい動きと油性っぽい動き。粘度を極端に下げたから、両方あるんだよ。確かに、普通の油性と同じように、いわゆるボールを転がしてインクを引き出すっていうこともやってるんだけど、それにもかかわらず止まっていると毛細管現象でインク引き出しちゃうんだよ。

【きだて】ダクダク出るんだよ。

【他故】出るんだ!

【高畑】かと言って、万年筆みたいにボールが回らなくてもいいのかっていうと、回らないとこの浮遊感は出ないんだよ。だから、どっちもなんだよ。だから、半分が油性で半分が水性みたいな挙動なんだよね。それもちょっと変わってる。だから、ペン止めてじっとしてたりすると、じわーって行っちゃったりとか。

【きだて】ペンを走らせた後に止めると、もうてきめんに出てくるよ。

【高畑】走らせて止めると、一番止めたところにジワーッて出ちゃうので。それで裏抜けするから、そういう意味では、キレイにノート取ろうと思う人にとっては、結構扱いにくいところがある。だから、万人におすすめはちょっとしづらい感があるけど、きだてさんが言うところも分かる。

【きだて】あとね、黒がめちゃめちゃ黒い。

【高畑】そうそう。めっちゃ黒い。

【きだて】ジェットとかと比較すると、確実に黒いっていうのが分かるぐらい。

【高畑】色は本当に黒いよ。

【きだて】この黒ね、多分油性の中で俺一番好きだなぐらいの黒。

【他故】ああ、そう。

【高畑】良い黒だよね。「エナージェル」が就活ペンですごく黒いんだけど、「エナージェル」より黒く見えるよ。「エナージェル」がちょっと明るく見える。

――文とびの記事に載っている写真を今見てますけど、特に0.5㎜はくっきりと黒が見えますね。

20240619pentel3.jpg

【きだて】これね。フローがエグいので余計にくっきり見えるっていうのはあるんだけど。

【高畑】一段太く感じる。0.3㎜からあるんだよ。だからパイロットの「アクロボール」とかと一緒なんだけど、「アクロボール」の0.3と並べて書いたら全然太いんだよ。インクがいっぱい出るから。

【きだて】インクがめっちゃ染みるから、これの0.3がジェットの0.5 と同じぐらいだよね。

【高畑】だから、1段ずれてる感じ。線の筆記感としたら、0.3が全然0.3な感じがしなくて。パイロットの0.3㎜って本当に細いなっていうか、めっちゃ細い線をシャープに引いてる感じがするけど、これはそんな感じが全然しないんだよね。だから、0.3㎜ボールと言いつつ、0.5ぐらいの線がどーっと引けるし、染みていく感じも含めて、めちゃくちゃ細くて硬い「マジックインキ」というか、油性ペンで書いてるみたいな気分にはなる。でも、めっちゃ黒いので。だから、今まで持ってるボールペンとちょっと色んな面で違う。

【きだて】だいぶ違う。色々と挙動もお作法も違う。

【高畑】まだ何が正解なのか分かんないけど、ただ上手く合う人がすごいあると思う。やっぱり、雑書きにはすごいいいなと思う。

【きだて】でも、そう言う意味で面白いのは0.4までだね。0.3はね、ちょっと使いづらい。本当にね、ペンを持って垂直に立てるぐらいで書かないと。

【高畑】そうそう。斜めに弱い。

【きだて】寝かせるだけでも途端にガリガリし出すんで。書けるレンジがすごく狭い。

【他故】そうなんだー。

【高畑】これはね、立てて書く筆記具です。「ビクーニャ」が入っている「カルム」は割と寝かせても普通に書けるんだけど、これは許容角度がめちゃめちゃ狭いです。30°ぐらいまでしかいかない。45°いったらもう書けない。

【きだて】だめだね。

【高畑】だから、すごい立てて書く筆記具なんだよね。いろんな意味でかなり個性が強い。

【他故】いよいよ使ってみたくなったなぁ。

【高畑】あとね、パイロットはブルーがキレイなんだけど、ぺんてるは赤がキレイなんですよ。

【きだて】うん、赤キレイ。

【高畑】この赤色がキレイで、めちゃくちゃ滑って速いってことは、何がいいってやっぱ丸付けペンとしたら最高。

【きだて】丸付けだね。

【高畑】こんなに気持ちよくグライドする丸つけペンは見たことがないって感じがする。

【きだて】本当にフローがいいんで、0.5でも十分丸付けに使えますぐらいの太さ。

【他故】たっぷり出るもんね。

【高畑】シャッて丸つけるときにはすごい乗ってくれるのと、あとさっききだてさんが言ったみたいに、文字とかを書くときにはそんなめちゃめちゃ滑るわけでもないので、答案用紙に対してコメントを書いたりするときは、それはそれなりにコントロールもできるんじゃないかな。テスト用紙だったら裏抜けてもいいじゃんって、片面仕様の紙だったらいいんじゃないと思ったりはするので、丸付けペンとして非常に気持ちがいいかなと思う。ただ、インクが減るのは早そうだから。

【きだて】まぁ、こんだけインクが出るんだから当然よね。それはもう。

【高畑】コスパを言うとあれかもしれないけど、ただ赤はめっちゃ鮮やか。

【他故】これ、1本いくらだっけ?

【高畑】300円プラス消費税。

【他故】やっぱり高いんだね。

【高畑】ちょい高い。「カルム」がいくらだっけ?

――税込165円ですよ。

【高畑】そこから行くと倍ぐらいするっていうところはあるので。ただ、開発に7年かかったとぺんてるは言っているので。物性から追い込んでいったんじゃなくて、ただひたすらいろんな種類のインクを作ってみて、書き心地を手で比べて「これいいじゃん」っていうやつを量産したらしいよ。

【きだて】泥臭い開発をしたな(笑)。

【高畑】軽い・重いじゃない別の軸があるという話なんだけど、それが何なのかが分かってないんだって。「書いたときに“WOW!”っていう感じがある」インクを作りたいといって、この“WOW!”は何なんだっていうのを色々とやった。その結果、いろんな種類を作ったらしいんだけど、その山ほど作った中の「ヌル3」っていうインクがあるらしいんだけど。

【きだて】それはあるインクなのか?

【高畑】これは「ヌル1」とか「ヌル2」とか「ヌル5」とか色々作って、何十種類が何百種類か知らないけど、それを100人ぐらいでテストをしながらやった中で、「ヌル3いいね」ってなったらしくて、でこれを再現するといって、先に官能評価ありきなんだって。

【きだて】浮遊感があるインクだけあって、フワフワしてんな(笑)。

【高畑】元々決めてる感じがフワフワする浮遊感がある感じはする。例えば、ベンチマークになってる筆記具があって、「それよりも粘度を若干下げましょう」とか、「黒さを若干上げましょう」とか、そういうことではないらしい。そうではなくて、もう書いて問答無用で気持ちいいっていう感じを探した結果、この「ヌル3」がいいってことになったらしいよ。

【きだて】ここまで官能性ありきだと、ハマんない人には絶対ハマらないやつじゃん。

【高畑】ハマらないと思うよ。「きだてさんがこれ選んだんだ」って思って話を聞いたら、なるほどねっていう感じではあるよ。

【きだて】これが気持ちいいとか、そういうのとまたちょっと違う。

【高畑】きだてさんが、ずっと低粘度油性を親の敵みたいに言っていたから。そのきだてさんがさ、低粘度油性のキワにあるみたいなボールペンを「アリ」って言うから、「どういう所?」って話を聞いてみたら、確かにきだてさんが言うみたいに、低速でゆっくり書いたりとか、しっかり筆圧かけて書くと勝手には滑らないねっていうのは、確かにそんな感じがする。

【他故】へぇ。

【きだて】なかなか面白いペンだよ。

【他故】俺は、まだ触ってもいないし、まだ売ってもいないから買ってないわけだけど、0.3と0.4と0.5があって3つは買えないなと思ったら、どれを選べばいいの?

【高畑】きだてさんはどれがおすすめですか?

【きだて】実用のパランスを考えると0.4がおすすめなんだけど、でも「フローチューン」の官能性の部分は0.5に濃く出ているんだよね。さっきから言っている浮遊感ってところを味わうためには、よりダクダクとインクが出ていた方が絶対いい。なので試しに買うなら0.5で、0.5が面白いなと思ったら0.4を買ってみるっていうのもありかも。

【他故】なるほどね。

【高畑】それは分かる。そんな感じ。

【きだて】コントロールのバランスとか、字の細さとか、その辺のバランスを全部合わせると0.4が好き。

【他故】なるほど。

【高畑】まあ、そうだね。僕も、最初に買うなら0.5か0.4のどっちかがいいんじゃないのかなって思う。あと実用で買うんだったら、0.5のつもりで0.5を買うと、ちょっと太いので。

【きだて】そうだね。

【高畑】そういう意味では、0.4でいいのかもしれないなと思うんだけど。「フローチューン」の“フロー”っていう感じを味わうっていうところで行くと、1回は0.5を使ってみてもらいたい感じはする。0.3は、このペンにしてみたら、ちょっと細いかなっていう感じはするな。0.3で小さい文字を書きたいんだったら、他のペンの0.3でいい気がするな。

【きだて】これの0.3使うんだったら、他のゲル0.3の方が使いやすい。

【高畑】「フローチューン」は、官能的にっていうのもあったりもするし、じゃあ「エナージェル」と何が違うんだとすごい思ってたんだけど、「エナージェル」が就活ペンって言われるぐらいキレイな文字が書けるんでね。滑り過ぎないし、すごい抑揚もつけられるというのもあったりするし。で裏抜けもあんまりしないじゃないですか。だから「エナージェル」は、僕は前から「見せ心地」の良いというか、「読み心地」の良いペンとよく言ってるんだけど、それで行くとやっぱりこっちは書き心地なんだよね。書いたものを人に見せるっていうところでいくと、人によっては字が暴れるかなと。俺は少なくとも、これが面白いところのレンジで書くと暴れるので、全然見せられるようなメモにならない。後で自分で読んでも、読めるか読めないかみたいな文字になるんだけど、ただ書いてるときのドライブ感はすごい強いので、何か「わー」って気持ちに乗せて、思ったことをどんどん書いていくみたいな、そういうスピーディーな感じのところにはいいような気がしたので。そこら辺で違うものとして面白がるには、すごい面白いのが出たなと。

【他故】面白そうだ。

【高畑】他故さんには使ってもらいたい。

【きだて】これは言っとかなきゃいけないんだけど、シンプルなゴムのグリップなんだけど、割と効く。

【高畑】そう、きだてさんがそこを何て言うか気になってた。これ、凸凹パターンがないんだよ。

【他故】ただのゴムグリップなのね。

【高畑】ちょい硬めなんだよ。きだてさんが評価してるのが、ちょっと「おっ」と思った。「エナージェル」とかもうねうねパターンが入ってるし、「カルム」なんて、シボシボパターンが入ってるけど、これは何もないんだよ。

【きだて】あれと比べると滑るかなと思ったんだけど、ちゃんとグリップする。

【高畑】本当? 手汗派の人も一度試してほしい。

【きだて】何かね、ちょっとペトペトする感じ。手汗を含むと。

【高畑】なるほど。ナチュラルな状態では、別にペトペトっていうか、モチモチしてる感じじゃなくて、ちょい硬めな感じがする。でもきだてさんがいいって言ってるから、結構いいのかもしれない。

【他故】それは、何か効きそうな感じがするよ。

【きだて】そこも含めてという感じかな。

――ぺんてるも「マットホップ」とか、最近クセ強なペンを出してますからね。

【高畑】いっぱい出してるよね。

――それに「ホワイトスピード」も含めればさらに。

【高畑】「ホワイトスピード」もスゴいからね(笑)。

――発売が楽しみということで。まあこれが出る頃には使ってる方も多いでしょうから、頷いてくれる人も多いんじゃないかなと思います。

*次回は「パスワードノート ケルベロス」です。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/

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