【連載】月刊ブング・ジャム Vol.20前編
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.20前編では、アイデア満載の便利な小物系文具についてブング・ジャムのみなさんが熱く語っています。
ブング・ジャムはポケットがお好き?
――今回は、「技アリ、便利小物文具」というテーマで…。
【きだて】何だか、フワッとしてんな(笑)。
【高畑】フワッとしたテーマですね(笑)。
――まあまあ(苦笑)。まずは手帳シーズンなので「ハルポ」からです。これは評判が良いようで、「文とび」でも前に取り上げたときに反響大きかったですよ。
【他故】私もサックリ使ってますよ。
――他故さんも使ってるんですね。あっ、みなさんお使いですか!
【高畑】そうそう、使ってます。
【きだて】今まで、こういう密閉タイプの増設ポケットってなかったじゃないですか。
【高畑】上が開いている増設ポケットはあったよね。
【きだて】そう。そういうのって、大抵薄い名刺とか、枚数少なくなったふせんを入れておくぐらいだったので。
――サイドポケットみたいなはさむやつですよね。
【きだて】そうそう。紙の摩擦力ではさんでいるだけみたいなポケットだったわけじゃない。それに対して、これはガッツリ「袋」なわけでしょ。
【他故】はいはい、そうだね。
【高畑】ジッパー袋だからね。俺、めちゃくちゃジッパー袋を使う人でさ。
【他故】わはは(笑)。
【高畑】とにかく、物が多いわけじゃん。それはちょっとずつグルーピングしておかないと、わけが分からなくなる。
【きだて】それは分かるよ。
【高畑】これに限らず、無地のお徳用のジッパー袋を買ってくるわけ。それで、A4が入るやつとか、はがきサイズのが入るのとか3種類ぐらいのを使っているんだけど、このジッパー付きの安心感はすげーあるよ。
【他故】ああ、そうね。
【きだて】ジップ袋の何がいいって、素通しの袋と違って、自分で意識して開けようとしない限りは開かないってのがいいんだよ。気密性もあるし。
【他故】漏れないからね、これだったら絶対に。滑り落ちたりとかも絶対にないし。
【きだて】まあ、とにかく安心なわけですわ。
【高畑】どこに貼って、何を入れてます?
【きだて】俺は、ノートカバーの内側に貼って、小銭とフリクションボールのリフィルとふせんを入れてる。
【高畑】あ~、なるほど。
【きだて】小銭は、とりあえず最低限飲み物を買えるくらいは入れておく。
【他故】分かるよ。全く小銭持ってない瞬間とかあるよね。Suicaも使えなかったりして。
――ゼブラの「ペモ アイディー」と一緒ですね。
【きだて】はいはい、そう。
【高畑】要はそこだよね。「ペモ アイディー」の裏に貼ってもいいくらいだよ(笑)。
【きだて】「ペモ アイディー」に札を入れて、「ハルポ」には小銭を入れておくんだよ。
【他故】そうだよ、「ペモ アイディー」に小銭を入れると、パカッと開けたときに出ちゃうかもしれないけど、こっちだったら大丈夫だから。
【きだて】そうそう。
【他故】小銭はいいかもしれないな。
――必ずしも手帳に貼る必要はないですものね。
【きだて】手帳に便利、というだけで、特に手帳に限定した製品じゃないんだよね。
【他故】どこでもいいんですものね。
【きだて】でも、持ち歩くものに貼るのが基本なんだよ。それこそ、スマホの裏とかでもいいわけでさ。
【他故】全然いいじゃん。最近のスマホは、それなりに大きさがあるので。
【きだて】「iPhone XS MAX」だったら貼れるでしょ。あっ、ちょっと微妙かな?
【高畑】ちょっとはみ出る?
【他故】ちょっと切るぐらいは許してもらって。
【高畑】90°横向きに貼って、この耳のところをちょっと切ればいいか。
【きだて】難しいね。
【高畑】これ、厚みが出せるところがいいところなんだけど、厚みがあるものを入れたときのために、粘着面がちょっと小っちゃいのね。これ、マチが取れるようにしてあるんだよね。
【きだて】そうそう。ふくらんだときに粘着部分に干渉しないようになってるんだ。
【他故】しかも、これがちゃんと貼り付いているから、取り出しやすいんだ。
【高畑】缶ペンの裏に貼っているんだけど、貼る相手が硬いと、差し込みにくいじゃん。
【きだて】そう。のりがないところが浮いてくれるから、入れやすいという。
【他故】よく考えているよね。
【高畑】どこにでもポケットが増設できるのは、いいよね。
【きだて】俺らみたいなタイプの人間って、常に物を持ち歩かないと死んじゃう病じゃん。
【高畑】死んじゃう病だね。
【きだて】不安で死んじゃう病じゃん。うさぎが淋しくて死ぬみたいに、物を持ち歩かないと恐くて死ぬという。
【高畑】それは、前回の「スマート印鑑」とかそういう感じだよね。
【きだて】そう。要るときに出てこないと死ぬ、そういう病なので。
【他故】ないとすぐ死ぬんだ(笑)。
【きだて】文房具マニアすぐ死ぬ。だから、ポケットというか、物を持ち歩くペイロードが大きければ大きいほどいいわけだ。
【他故】袋に小分けで持っていてもいいんだけど、俺はその袋単位でもなくしちゃうんだ。貼り付けてあった方が圧倒的にいいのよ。
【きだて】大きい物にコバンザメのように付いているのが一番安心。
【他故】そう。
【高畑】だからつい、ポケットの多い服とか買っちゃうし。ポケットの多いカバン買っちゃうし。
【他故】あ~、そうそう。
【きだて】もうね、俺あれだもん、中学のときに「かっこよくて便利!」と思ってフィッシングベスト着てたもん。
【他故】わはは(笑)!
【高畑】うわぁ~、ちょっと分かる。
【きだて】かっこいいというか、機能性を重視して。
【他故】分かるよ。俺もカメラベストは相当悩んだもの。
【きだて】今は今は「古着がいいよね」とか「着こなし力があるよね」とか言っている人間がさ、フィッシングベスト着てたんだぜ。つらい…(苦笑)。
【他故】それ、どんだけ入れてた?
【きだて】もうポケット全部パンパンだよ。
【他故】うへぇ!
――何をそんなに入れてるのかと思いますよ。
【高畑】俺は、学生服の内側がそれだったよ。それにうちは縫製屋だったので、あるはずのないポケットを付けられる家だったから。
【他故】改造学生服でそっちかよ(笑)。
【きだて】あ、でも俺もそうだった。
【他故】そっちかよ(爆笑)。
【高畑】裏に虎とか龍はいないけど、ここにゲージパンチとか入れてるんだよ。
――ゲージパンチ(笑)。
【高畑】こっちがゲージパンチで、あっちにスライドカッターが入っていたりするんだよ。
【他故】まさしく、ブラック・ジャック先生だ(笑)。
【きだて】他故さんはしてなかったの?
【他故】俺はそういう重装備は一切してなかった。
【きだて】あっ、そう?
【他故】そこまで持ち歩こうと思ってなかったし、あとは服を改造するっていうのは、残念ながら思い付かなかったわ。
【きだて】えー、俺の学生服の内ポケット、自転車のパンク修理材とか入ってたな。
【他故】パンク修理材は自転車に付けとけばいいじゃん。
【高畑】俺は、自分が「チームデミ」だったからさ。
【他故】人間「チームデミ」(笑)。
【高畑】「チームデミ」がフルサイズで入ってるんだよ。ハサミだって、ちゃんとケースに入ったハサミが出てくるから。定規も30㎝のが出てくるみたいなことだから。
【きだて】「チームデミ」じゃなくて、「チームグランデ」だよ。
【他故】「デミ」じゃなくて、でかいんだ。
【高畑】いや~、だからそういうのを引きずっちゃうじゃない。未だについつい色々と入れてしまうし、パソコンやスマホには多めにアプリが入っているし。
【他故】カバンが重くなるし、みんなそうなんだよね。
【高畑】物持ちの良すぎる部分が世に出てしまうので。「こんなところにもポケットが貼れる」って思っちゃうと(笑)。
【他故】わはは(爆笑)。
【きだて】いや、ウキウキするじゃん。
【高畑】それはする。
【きだて】増設ペイロードの部分だけでも、浮き立つわけさ。
【他故】増設できるって、すごいグッとくるよね。
【高畑】何かそれ分かるわ。
【きだて】下手すると、そこに何を入れるのかのプランがないまま、ポケットを増やすからね。
【他故】あ~、可能性ある。「ここ空いてるじゃん」みたいな(笑)。
【高畑】まあね、みんな何だかんだ言いながら、TVショッピングで「こんなにポケットがあるんです」というと、「へぇ~」って観てしまうという。
【きだて】俺はさすがに反動でさ、ポケットのいっぱいある服は着れなくなったんだけどさ。あの黒歴史の反動で。
――黒歴史(笑)。
【高畑】それで、増やした結果、見つからなくなる問題が発生して。
【きだて】そう!
【高畑】学生服のときはまだよかったんだよ。毎日同じ制服だから。
【他故】ああ、そうだね。
【高畑】だから、配置が変わらないんだけど、大人になるとさすがに毎日服を着替えるじゃん。
【他故】まあね。
【高畑】そうすると、入れる場所が安定しなくて。
【きだて】それで、一々入れ替えるのも面倒くさくて。
【他故】だからといって、全部同じように入れていたら、大変なことになるしね。
【高畑】その結果、服じゃなくて手帳だったり、カバンだったり、ペンケースだったりになるんだよ。
【他故】別のものになるのね。
【高畑】だから、そういうところについ貼りたくなる気持ちをですね、とか言いながら、デザインは女子向けですけどね。
【きだて】これに関しては、おっさん向けを何とかしてくれと。
【高畑】本当にそうだよね。地味なおじさん向けが出たら、それはそれでいいような気がする。
【他故】いいんじゃないかね。
【きだて】多分ね、女性でもここまでポップだと、手帳に貼りづらいとかあると思うんだよ。
【他故】自分の手帳のデザインに合わないとかね。
【高畑】地味にして、ちょっと男性目線であったりするといいかなと思うけど。
【他故】もっとベーシックな色でいいんだよね。
――無地でいいんでしょうね。
【きだて】全然無地でいいよ。
【高畑】でも、透明のただの無地にしてしまうと、「あのジッパー袋と一緒じゃん」って思って、何百円か払うのが高く見えちゃうから。そこは、濃紺にするとか。
【他故】ああ、そうね。
【高畑】このゴールドの印刷はいいので、バックを濃紺の地味なチェックとか幾何学のパターンにするとか。
【他故】濃紺とかモスグリーンとか、ちょっとだけ考えた色だなというのが分かるように(笑)。
【高畑】ちょっと高級感出したりね。
【きだて】レザー調の印刷とかでもいいわけじゃん。
【高畑】それはそれであってもいいよね。
【他故】全然いいですよ。1から12まで数字書いてあるとかでもいいよね。
――それでもいいですね。
【他故】お薬ポケットみたいに使うとかね。
【高畑】いろんなところに貼って使えるお薬ポケットね(笑)。
【他故】朝・昼・晩で貼っておくでもいいじゃないですか。
【高畑】いや、いいですよ。
――そんなに皆さんがポケット好きだとは思いませんでしたよ。
【他故】ポケットが好きというか、何かを持ち運ぶためにポケット欲しいので。
――他故さんはそうかもしれないですけど、他のお二方は無条件で好きみたいですよ(笑)。
【高畑】そうなんだよ。四次元ポケットがあれば本当はよかったんだけど、それが実現しないので、ポケットの数を増やしているという。
【きだて】ポケットが好きなんじゃないですよ、さっきから言っているように、ないと死ぬんですよ。
【他故】好きとか嫌いとかじゃないんだ(笑)。
【高畑】ポケットがないと死ぬというか、ポケットに入れている安心感がないと死ぬんだよ。
【きだて】そうそう。恐くて外歩けないから。
――そこまで(笑)。
【きだて】いや、本当に手ぶらで歩けないんだもの。何か不安で。
【他故】何も持たずにというのは恐い?
【きだて】完全に神経症みたいになっているんかね。
――きだてさんはウエストポーチは付けないんですか?
【高畑】昔やってたよね(笑)。
【他故】体に付けるもので、ウエストポーチほど便利なものはないですからね。
【高畑】ウエストポーチは、普通に便利だから僕も付けてましたね。
【きだて】ウエストポーチの時代から、ちょっと大きくなってヒップバッグみたいなのに進化したときもあったじゃない。そういうのを転々と試しつつだったので、そういうのの残骸が腐るほどあるんだよ。
【高畑】色々と試したけど、大学のときが一番だな。高校のときは制服のかたちがあったけど、大学はウエストポーチでも何でもいいじゃん。
【他故】その辺は、自由だからね。
【高畑】大学は授業のたびに移動するから教室が決まってなくて、結局自分で持ち歩くしかないから。
【他故】まあ、そうなるよね。
【高畑】そういうときは、大概持ち物が多いので、すぐに出したいからって、そういうのを付けてたなあ。今でもベルトにそういうのを付けているから、同じなんだけどね。
【他故】僕も確か大学のときかな。ショルダーになっていて、脇のあたりに薄いシステム手帳が入るというのがウリになっているのがあって。
【きだて】ガンホルスターみたいなやつだな。何だよ、俺らのことを寒い目で見ておきながら(笑)。
【他故】高校生ではやってないけど、大学生になったら俺もやってるんだよ(笑)。
【高畑】その当時は、俺らはカタログを見ながら、「こういうのがあったら付けるかな」と言っていた世代なので。
【他故】そうなんだ。これで上着を着ても大丈夫だから。
【きだて】上着を着ても、ふくらみが目立たないという。何だよそれって(笑)。
【他故】手を入れた瞬間に撃たれるやつだよ(笑)。
【きだて】だいぶ「ハルポ」から離れたな、話を戻そう(笑)。
――今まで何でこれがなかったんですかね。何か今までもありそうな気がするけど。
【きだて】本当にね、思い付きそうだけど、思い付かなかったのねっていう。
――今までだって有ってもよさそうなものですよね。
【高畑】ジッパーのないポケットはさんざん見てきたけど、ジッパーがあることで安心感がね。あと、厚みのあるものでも入るので、毎日飲まないといけない錠剤とかが、これだと入るじゃない。
【他故】入るね。
【きだて】とにかく、細々としたものが入る安心感は大きいよね。
【他故】日常で持ち歩きたいものって、フィルム状のものばかりじゃないからね。
――お年寄りは薬入れにいいですよね。
【他故】薬もそうだし、これだったらカギなんかも入れておけるし、いろんなのができますよ。
【高畑】どこにでも貼れるということは、クルマのダッシュボードのケースの裏とかに貼っておくこともできるわけですよ。
【きだて】シークレットポケットとして。
【高畑】植木鉢の下にカギを隠すぐらいだったら、例えば郵便受けの裏側にこれを貼っておくとか。ジッパーだから、中が汚れないというのも良かったりするし。何か、その手の何かはできそうだよね。
【きだて】粘着も結構強いからさ。ふくらんでパンパンになって、「えっ、大丈夫かな」と思っても、はがれずに残ってるから。
【他故】そうそう。ほぼはがれないよね。
【きだて】逆に、貼り直しができないので、貼るときの位置決めで手がプルプルするよね。
【他故】あー、そうね。
――慎重にやらないといけないんですね。
【きだて】慎重にやらないと大変なことになるよ。
【高畑】これ、電源操作パネルの裏側とかにもポケットが付けられるわけじゃん。そういうところに、管理カードを入れておいたりするのって、よくあるじゃん。
【他故】あるね。
【高畑】ああいうのが、簡単に付けられるので。ジッパー袋じゃないけど、ポケットみたいなのを自作して、ガムテープで貼ってあったりするじゃん。扉の裏とかに。
【きだて】あるある、あるね。
【高畑】ああいうのが簡単に作れるのはいいね。
【きだて】そういう用途を考えるても、柄を何とかしてくれというね(笑)。
【高畑】もうちょっと、ベーシックな感じね。
【他故】「ベーシックシリーズ」を出してもちゃんと売れますよ、というのは言っておきたいよね。
【きだて】ISOTで見た瞬間から言ったからね。「無地出してくれ」って(笑)。
【他故】これはこれでいいんだけどね。
【きだて】貼る場所を選ばないものが欲しいね。便利なのは、使っていて本当によく分かっているから。
【他故】そうね。
【高畑】これ、SDカードとかも入るんだよね。
【きだて】そうそう。SDカードどころか、USBのフラッシュメモリも入るんだよ。
【他故】それで、濡らしたくなかったら、ピッチリ閉めちゃえばいいからね。
【高畑】まあ、ぼくらがおっさんだからかもしれないけど、そういう事務用途的な使い方を思い付くよね。
――これは、手帳に限らず色々な使い方ができるということで、可能性が広がりますよね。
【他故】そうですね。
【高畑】この中に、虎の子の1万円札を何枚か入れて、それを額縁の裏に貼るとか。そういうことももちろん可能なわけですよ。
【きだて】本当に、用途はいくらでも思いつけるな。
【高畑】いくらでもあるよね。むしろ、用途コンテストみたいなのをやたらいいんじゃないの。
――「ハルポ使い方コンテスト」みたいなのですね。それはいいですね。
【他故】「新しい使い方を考えてみよう」って。
【高畑】思わぬところで、「ああ、そこか」っていうアイデアが出てくるかもしれない。
【きだて】今言った以外でも便利な使い方はあるはずじゃん。
【他故】あるある。絶対あるよ。
【きだて】そういう人のアイデアが聞きたいよね。気が付けば、テープの切り口真っ直ぐに!
『セロテープ®小巻カッターつき〈まっすぐ切れるタイプ〉』をAmazonでチェック
――次は「セロテープ®小巻カッターつき〈まっすぐ切れるタイプ〉」です。
【高畑】これ、外見が今までのと変わりがないんだけど、値段がちょっと上がるよね。
――普通のテープカッターより50円高いですね。今までのが税抜150円で、これが税抜200円。
【他故】いや、200円でいいですよ。
【高畑】それで何が変わったかというと、テープカッターの刃のギザギザが超絶小さくなったので、切り口がほぼ真っ直ぐに見える。コクヨの「カルカット」と近い方式。
【きだて】ニチバンとしては「直線美」という話だろうよ(笑)。
【高畑】いや、違うんだよ。「直線美」とは刃が違うんだよ。
【きだて】あ~、そうか。
【他故】「直線美」じゃないということを言っておかないといけないんだ。
【高畑】「直線美」タイプの刃かなと最初は思ったんだけど、あれはメタルじゃないとできないんだよ。
【きだて】そうそう、そうだね。
――「直線美」でハンディタイプありませんでした?
【高畑】ありましたよ。あれにはメタルの刃が付いてた。
【他故】大巻のハンディはあったけど、小巻のはなかったんじゃないですか。
【高畑】小巻のあるよ。
――そう。ちょっと独特なデザインで。
【高畑】パーマンのバッジみたいなやつ。
【他故】あ~、あったね。
【高畑】あれは確か、メタルの刃が付いているんだけど、これは廉価版だから。まあ、あれだよね。どこでも見るタイプのテープカッターが、ちょっと進化しましたよということで。
【他故】そうだね。
【高畑】時々、ちょっとずつ変わってるんだよね。
【きだて】今後、うさぎとかゾウとかの動物型テープカッターの刃もこれに切り替わっていくのかね。
【高畑】どうだろうね。あれは型が作ってあるから、あれはあれで行くんじゃない?
【他故】この刃を付けた、新しいガワとして動物シリーズを出すんじゃないかな。
――その可能性もありますかね。
【他故】話は変わりますが、子どもがセロテープを学校に持っていくときに、このかたちじゃないと持って行けないんですよね。
【きだて】そらそうだよね。
【他故】テープだけ持っていってもしょうがないし、大巻のものを持っていく発想がないんですよ。
【きだて】みんな大体、ニチバンのこれを持っていくわけじゃない。
【他故】ほぼこれを持っていくんだよね。その中で、まっすぐに切れる改良タイプが出てきたのはいいなと思うんだけどね。
【高畑】これ、めちゃくちゃ量産する商品だから、金型がしっかりしていてですね、僕が時々言っていることですが「ええ金型使ってまんな」という感じがしますよ(笑)。特にギザギザのところがね。
――金型好きにはたまらない(笑)。
【高畑】やっぱりきれいなんですよね。
【きだて】さすが、長く使うものには金をかけるね。
【高畑】これは長く使うつもりなんだろうと思うよ。よくできているよ。
【きだて】ここ数年、セロテープ使うときは、真っ直ぐ切れる系しか使ってこなかったからさ、普通にテープを切ったらどれだけギザギザしていたかが、もうそろそろそのイメージが頭の中から消えつつあるんだよ。
――あ~、確かにね。
【きだて】なんだけど、デザイン上で「切ったテープを貼ってますよ」というモチーフを作る時は、未だにギザギザを作らざるを得ない。
【他故】そうだよね。
【高畑】それは未だに、「電話」というとダイアル式だったり、「保存」っていうとフロッピーディスクの絵だったりするから。
【きだて】何かね、そのアップデートされてない感がすごくあって。
【高畑】それは、見る人がアップデートされてないから。四角いとさ、全然テープ貼った感が出ないから。
【きだて】そうなんだよ。
【他故】そう、それだとただの四角になっちゃうからね。
【きだて】だから、すげーやりにくい。
【他故】アイコンってすごいなと思うよ。
【高畑】そうなんだよ。だから、テープのアイコンとしては、今後どうなっていくんだろうという感じはするけど、でも単純に、普通に使う場合はこっちの方が便利じゃんって思うので。
【きだて】それはそうだよ。
【高畑】ギザギザである理由は、今さらないんだけど。
【きだて】貼ったところが、ギザギザのところから縦に裂けてきたりするじゃない。
【他故】あるね。
【きだて】真っ直ぐだと、そういう確率も減るしさ。
【高畑】200円でこの完成度のものが手に入るのは、まあいい話だよね。
【きだて】結局のところ、これが一番日本で出ているテープカッターだと思うんだよ。
【他故】そうだろうね。
【きだて】それの刃が、真っ直ぐ切れるものになったということは、テープのアイコンのギザギザが、今後これによってちょっとずつ変わっていく可能性があるよね。
【他故】みんな見たことのあるセロテープが、だんだんと真っ直ぐになっていくんだ。
【きだて】そう。あと20年ぐらいすると、テープも真っ直ぐが普通という感覚になるのかもしれない。
【他故】20年かぁ。
【きだて】その時にセロテープがあるかどうか分からないけどな。
――それはあるでしょ。
【高畑】セロテープの需要はあるでしょ。だから、量販店なんかで売っているノーブランドのテープカッターがどうなるかだよ。小さい刃を採用したりとか。
【他故】据え置きタイプでも、ピンからキリのかなり下の方のやつってあるからね。
【高畑】380円くらいでホームセンターなんかで売っている安いやつが、どっちに転ぶかという。
【他故】でも、小型のやつはこのかたちにほぼ集約されていくんだろうなと思うよ。他のメーカーで、テープがいっしょに付いて売っているやつってあるんだっけ?
――いや、あるでしょう。
【高畑】スリーエムとか。
【他故】ニチバンとスリーエムぐらいですか?
【高畑】ホームセンターとか100均で売ってるのに付いているのもあるよね。
――学童文具メーカーでもありますよね。
【高畑】そう。学童メーカーは、むしろテープカッターの方を売りたいから。それで、カッターにテープが付いていないと、すぐクレームがつくからね。
【他故】まあ、このかたちになったことで、一番手にされやすいから「ギザギザじゃなくなったんだ」と初めて気がつくという人も出てくるのかな。
【きだて】どうだろう。多分ね、気づかないままで使い続けるんだと思う。
【他故】あ、比べているわけじゃないからか。
――でも、パッケージに「切り口まっすぐ」ってこれだけ大きく書いてあるから。
【きだて】でも、パッケージはそうでも、出しちゃえば分からないから。
――あ~、買う人はともかく、使っている家族は気がつかないですね。
【他故】前のやつと並べて置いておいたところで、ギザギザかどうかを気にして使うかどうか。
【高畑】だから、気がつけばなんだよね。気がついたらそうなってたみたいな。そんなものかな。
――この新製品記事を載せたとき、結構大きな反響があったので。
【きだて】それは、いつも「文とび」を見ているリテラシーの高い人だけでしょ。
――でも、「直線美」も「Bun2大賞」で1位に選ばれたことがあったし。
【きだて】ああ、そうか。
【他故】関心があるんだ。
【高畑】セロテープそのものに対しては、それなりの関心があるんだ。
――あの時だって、「テープのギザギザが嫌で、そこをカッターで切ってます」という人が多かったですからね。
【高畑】そういう話はよく聞く。
【きだて】いや、さすがにそれは「お前は製版屋か」という話で。
――いや、でもそんなの気にするの日本人ぐらいだろうと思ってたけど。
【きだて】だと思うよ。で、製版屋さんは、テープのギザギザで陰影が出ちゃったりするから、テープカッターの刃にカミソリを貼っていたりするのね。
【高畑】あ~、そうやって貼り直すんだよね。それで、時々手をケガしたりするんだよね。
【他故】さわれば切れちゃうからね。
【高畑】そういう意味では、変わってきたのはいいことだ。これ、ギザギザが小さくなったけど、プラスチックだから耐久性の問題があるんだよね。今、すごいよく切れるの。これは、キッチリと目を立ててあげないと、切れないんだよね。200円でこれを出すとなったときに、このギザギザは多分こだわってエッジを出しているはずなので。
【きだて】そりゃそうだよね。
【高畑】これ、単にギザギザを小さくしただけだと切れ味が悪くなりやすいから。
【きだて】そうだね。大きいとトゲトゲも普通に目を立てやすいし。
【高畑】無理矢理引っ張って、穴があくんだよ。
【きだて】それで切れるんだよね。
【高畑】そう。だけど、それが小さくなったときの切れ味がいいというのは、さすがニチバンという感じがする。あと、入っているテープがセロテープだからというのもあるんだよね。多分、他のテープ用ではないので、それも含めて、このプラスチックで、この値段でできるんだろうな。
【きだて】これに関しては、読者に「これ、買った方がいいよ」という話ではなくて、いつかフと気がつくと君ん家にあるから、って感じで。
【他故】そうそう。確かにね。
【高畑】コンビニに駆け込んで買ったら、たまたまそれだったという。
【きだて】そう。というようになっていくと思うので。
【他故】いつから切り替わったのか、分からないよって言う(笑)。
【きだて】まさに、そんな感じだと思うよ。
【高畑】アハ体験みたいな。
――そうなると、20年後、30年後に「ギザギザテープ、何それ?」ということになるかもしれませんね。
【きだて】「何で、セロテープ貼ったところをギザギザで表現してるの」って言われたら、「昔はこうだったたんです」って(笑)。
【他故】それか、この世の中にギザギザのセロテープなんてないのにねという感じで。今のフロッピーを笑うのと同じで。
【きだて】「巻き戻しって何を巻くの?」と言っているのと同じでね。
【高畑】「B面って何?」とかね(笑)。
どちらも文字がにじまない!!
「ジャストフィット モジニライン」(ゼブラ) イオンの力でボールペンの文字がにじまない新開発のインクを搭載した蛍光ペン。水性ボールペンのインクが“マイナスの電荷”を帯びていることに注目し、蛍光ペンのインクに“プラスの電荷”を帯びた新成分を配合。互いのイオンが結合してボールペンのインクが紙面に固まり、にじみを抑えることを実現した。従来の「ジャストフィット」と同じく、ペン先に柔らかい素材のナイロンを使用し、しなって紙面にフィットするようになっている。
――最後は、「サラサマークオン」と「モジニライン」の合わせ技です。
【他故】絶対ににじまない組み合わせじゃないですか(笑)。
【高畑】超能力大会みたいだ。花を枯らす超能力と、それを戻そうとする超能力という感じ。何も起こってないけど、こいつ強いみたいな(笑)。
【きだて】何が起きているか分からないよね。
【高畑】どちらも何も起こらないことがウリなので。
【きだて】一応、水性顔料で効くという話だよね。
【他故】顔料なんだ。
――水性染料だとダメなんですね。
【きだて】でも、「サラサドライ」だと一応いけた。
【高畑】これ、イオンの力で押さえ込んでいるんだけど、それがどんな感じなんだろうね。
【きだて】ゼブラとしては、「サラサクリップ」がにじまない蛍光ペンを出したかったみたいだよ。
【他故】それはそうだろう。余所のことを考えても仕方ないだろうからね。
【きだて】他社が大体、主力商品を低粘度油性に切り替えている中にあってさ、ゼブラだけが頑なに水性顔料のサラサなわけじゃない。
【高畑】そうなんですよ。
【きだて】で顔料とはいえ、水性な分にじむ可能性があるわけですよ。
【高畑】でも「サラサマークオンならにじまないじゃないか」というんだけど、サラサ全部をマークオンにできないんだよね。
【他故】そうそう。
【高畑】そこなんだよね。
【きだて】それと、「サラサマークオン」の方がちょいお高めということもあるしね。
【他故】値段違うんだっけ? ああ、150円だ。
――普通の「サラサクリップ」より50円高いんですよ。
【高畑】低粘度油性に対して、サラサをにじませないマークオンを出して、サラサまわりを完璧に揃えようとしているんだけど、実は今ちょっと恐ろしいことが起こりつつあって、「OKB48」とかいろんなアンケートをみていると、学生は圧倒的にサラサなんだよ。
【きだて】ああ、そうね。
【高畑】大人のユーザーが多いから、低粘度油性が市場を占有していると思っているうちに、実はゼブラの侵略が始まっているんだよ。もうすでに、若い人たちで人気投票をすると、圧倒的にサラサになるんだよ。
【他故】そうなっちゃうんだ。
【高畑】要は、そのまま人口がシフトしていくと、今の大人が年をとって引退すればボールペンを使わなくなっていくのに対して、学生から今からガンガン働くぞという社会人になってきたときに、これから大人が使うボールペンは油性じゃないかもしれない。
【きだて】その可能性はあるんだよね。
【他故】うん、分かる分かる。
【高畑】だから、油性ボールペンが大人向けというのが、今後どうなっていくか分からない。もちろん、リフィルの問題があるから、大人が好む細いボディの多色ペンが作りにくいとか色々あるけど、サラサだって多色カスタマイズできるようになったじゃん。
【他故】「サラサセレクト」でできるようになったよね。
【高畑】だから、インクの減りが早いとかあるけど、これから先、ゲルインクがメインに侵食していくということは、十分あり得る話だなと思う。そのときに、そのまわりを全部固めていく。それで、気持ちいいもので揃えていくと。ゼブラとしては、油性は油性でやっていくけど、「次の市場はこっちだ」ということでゲルに専念するというのはアリだね。
【きだて】それで、その囲い込みが成功しつつあるわけじゃない。どう考えても。
【高畑】そうそう。
【他故】サラサには敵わないからな。
【きだて】ゲル好きの俺としては、そういう時代が「早く来い」と思うよ(笑)。
【高畑】そうなんだよ。それで、ゲルで困ることが昔ほどないんだよ。
【他故】ないね。
【高畑】今は、筆圧が弱くても複写伝票写るし。文字のエッジがくっきりはっきりしてるじゃん。
【きだて】そうだよ。耐水性だって、顔料系ならいっぺん乾いちゃえば多少雨に降られても何とかなったりするし。
【高畑】去年の「OKB48」で2位にまで漕ぎ着けたわけですよ。
【きだて】だから、「ジェットストリーム」を抜かすのは、何年後かのサラサの可能性があるわけでしょ。
【高畑】そりゃあるでしょ。
【他故】このまま続けていけばね。
【きだて】『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』で、今の30代が「ハイテックCコレト」で育ったという話をしたじゃない。その下がやっぱりサラサなんだよね。
【高畑】「ハイブリッド」派がいて、「ハイテックC」派と「シグノ」派がいて、そこから「コレト」世代が出てきて、それで今はサラサが強いじゃないですか。
――カラーペンでいくと、ハイテックCからサラサなんですよね。
【高畑】そう。カスタマイズペンを置いておくとそうだよね。
【他故】ハイテックCとシグノのすごい戦いがあって、その前段階でハイブリッドがあって、ゲルが段々と浸透してきた。ハイテックCとシグノの戦いの後に、色数でサラサが圧倒的な力を持つようになって。まあ、値段も違ったんだけど。
【高畑】その当時は、細く書く特殊な用途だったんだけど、今はもうゼネラルユースじゃない。
――「激細戦争」とかありましたよね。
【きだて】あったね。「シグノビット」とか。
【高畑】そう。その当時は学生向けの極細筆記具だったのが、サラサになるともうそんなのじゃなくて、「普通だよ」というラインナップなので。
【きだて】サラサの書き味に慣れちゃうと、ジェットストリームとか低粘度油性の書き味は、ヌルヌルして気持ち悪いって感じちゃうかもね。
【高畑】ゲルに慣れた後の油性インクは、また違うものだから。
【きだて】それに対して、落ち着かない感じを受ける人は、多分相当出てくると思うので、反ジェットストリーム包囲網は着々と築かれつつあるんだよ。
【高畑】なるほどね。ジェットストリームの弱点としては、多色化が難しいわけですよ。
――いわゆるカラーペンじゃないですからね。
【高畑】そう。黒・赤・青・緑の4色で46色と戦わないといけない。そう考えると、サラサなりの分があるわけで。
【きだて】分というか、将来性しかないよね。
【高畑】ジェットストリームの黒が150円でしょ。それに対して、可動式クリップとラバーグリップが付いて100円だからね。
【きだて】それで、150円出せばマークオンが買えちゃうわけじゃん。
【他故】まあ、そうだね。
――「サラサドライ」も買えますよ。
【他故】また性能の違うものも手に入るわけだしね。
【高畑】あとは、「サラサグランド」のさらに上の商品を作ったりしながら。
【きだて】「サラサプライム」?
【高畑】まあ、そういうプライムのもの。
【他故】単色で高くなっていくのも手だし、セレクトの芯を使った高級筆記具を出してみたり。
【きだて】ただ、ゲルの弱みとして、多色にまとめたときに、どうしたって軸が太くなるというのがあるじゃない。
【高畑】あと、インク減りが早いとかね。
【きだて】その辺が今後、ゼブラが何かしてくるのか、気になるところではあるんだけどね。
【他故】でもゼブラってさ、上にいくと必ず「シャーボ」に突き当たるじゃない。
【きだて】あー!
【他故】「シャーボ」に頭を押さえられている感じっていうかさ。「シャーボ」を突き抜ける製品が作れないよなっていう。
【高畑】忘れてた~。
【きだて】それだ!
【他故】自分たちの頭の上に、重い物が乗っかってるんだよな。
【きだて】ユーザーはそんなに気にしてないけど、ゼブラが社内で気にしている感というかさ。
【他故】あれを取っ払って、新しい筆記具をとなればね。
【高畑】あの4Cリフィルの汎用性の高さはいいんだけど、ゲルにするとインク量の問題が出ちゃうから。
【きだて】そうだよね。
――でも、「シャーボX」って、ゲルのリフィルあるじゃないですか。
【他故】あるけど、爆速で減るじゃないですか。
【きだて】あっという間だよ、本当に。
【高畑】普段使いすると、すぐインクなくなっちゃうから。そう考えると、ロング芯を入れたくなるんだよね。だから、「サラサセレクト」みたいなリフィルを入れたい。だけど、どうやっても油性の金属リフィルよりは太くなるし、減りが早い。
【他故】そうなんだよね。
【高畑】でも、やっぱり、ゲルを使いたい大人は出るよね。
【他故】出ると思う。
【高畑】ちゃんとしたビジネスマンで、高いスーツ着ているけど、ゲルの方がいいという人は出るよね。
【きだて】絶対いるよ、増えるよ。
――メーカーが違いますけど、「エナージェル」は就活ペンとして学生によく使われているから、彼らが社会人になってもそのままゲルを使うことはあるでしょうね。
【高畑】そのぺんてるでも、ゲルで多色で高級というのはちょっと苦手でしょ。それはゲルそのものが苦手なところだから、単色だったらいけると思うんですよ。
【他故】今、ゲルで多色で高級なのをやってるのはサクラクレパスだけでしょ。
【きだて】あ~。
【高畑】サクラクレパスは、あれのためにゲルの細軸のためのロング芯を作ったから。
【きだて】そうだね。
【他故】「ボールサイン」のシリーズだけでしょ、まともにできているのは。
【高畑】そこでいくと、サクラの先見性はちょっとあるんだよね。
【他故】細くできてるなというのは、すごくある。
――「ボールサイン」の時代がくるのかな?
【高畑】あの軸がちょっとゴツいんだよね。「サクラクラフトラボ」みたいにとんがらなくていいから、もうちょっと普段使いできるやつ。
【きだて】プレーンなやつね。
【他故】普段使いっぽいのでやってくれるとね。
【きだて】何かあれだな、「モジニライン」と「サラサマークオン」の話から、えらい飛んだな(笑)。
――マーカーの話を全然してませんけど(笑)。
【高畑】いや、だから蛍光ペンはこうあるべきだという話なんだよ。
【きだて】そりゃ、そうなるよね。
【高畑】ゲルインクの文字がにじんじゃうのを押さえられるのがこれですよ、というのが一緒に出ていたら、「そりゃ使おうか」という話なんですよ。
【きだて】そうなるね。これは「ジャストフィット モジニライン」じゃない。それまでちょっと人気が出てきた「ジャストフィット」にモジニラインインクを入れてきたということは、その辺がゼブラの本気でしょ。
【他故】そりゃそうでしょ。
【きだて】あえて別にせずに、「ジャストフィット」のシリーズとして“サラサがにじまない”としてわけだから。
【他故】こっちが主力ということで、総力戦になってきたな。
【高畑】これでソフトカラーとか出せるようになったら、かなり変わるよ。
【他故】このインクで「マイルドライナー」をやってくれたら、かなり欲しい。
【高畑】そうだよね。そうなってくるよね。でも、これ黄色とかピンクとかが普通にできているところを見ると、可能性はあるよ。
【他故】いけるんじゃね?
【きだて】現状で、特に違和感のある色じゃないものね。
【他故】来年すぐぐらいにでもグレーが欲しい。
【きだて】あ~、分かる。
【高畑】俺も欲しいよ。
――これで「マイルドライナー」を出せば、スタディプランナーで使っている子たちがこぞって使うでしょ。
【高畑】そう。だから、逆にいえば「マイルドライナー」が入れ替えになる可能性がある。「マイルドライナー」のインクをマイナーチェンジで切り替えていくみたいな感じで。色を変えないでできるとしたらですけど。
【きだて】そうだよね。
【高畑】でも、このボディもいいんだよね。思い切ってクリップなくしました系の。
【他故】すっきりしててすごくきれいだし。
【きだて】ただね、これペンケースの中で咄嗟に色の判断ができないんだわ。
【高畑】あ~。
【きだて】目立つ色の部分は転がり止めだけだからさ。
【高畑】裏返っていると見づらいということだね。
【きだて】筆箱の中で色を探すのが面倒。
【他故】完全にこれは立てるペンケース用でしょう。立てることで判断できるでしょうという、そういうデザインだよね。
【きだて】ただね、全員がそうなわけじゃないからね。
【高畑】そうだよね。そこが、デザインすっきりさせたい系の弊害というか。いや、いいんですよ。きれいなんですが、というのはちょっとあるね。
【きだて】きれいなんだけど、出して広げた状態で「どのデザインですか」ということじゃなくて、実際にペンケースに放り込んだ状態でのデザインというのもちょっと見てほしいなと思う。
【他故】そりゃそうだね。
【きだて】結局、使うシチュエーションはそっちの方が多いわけじゃん。
【他故】みんながみんな、3本セットや6本セットのプラケースのまま持ち歩いているわけじゃないからね。
――「モジニライン」のロゴがかわいい感じで。
【高畑】かわいいけど、「ボールペンの文字をにじませない」という文字があるから分かるので。
【他故】その強さを感じるけどね。
【高畑】「モジニライン」というので、それが分かるかというと。
【他故】それは分からないね。
【高畑】そういう意味では、まだまだかと思うけど、にじまないのはすごくいいので、できれば全部の蛍光ペンがにじまないようにしてくれればいいです。
【きだて】ゼブラにお願いしたいのが、インクをにじまないのに替えていくと同時に、キャップを“EZ(イージー)キャップ” に替えてくれないかな。
【高畑】片手で開くやつ?
【きだて】片手でというか、つまむだけでキャップが外れるやつ。
【他故】全部盛りじゃないか、それ(笑)。
【きだて】その全部盛りを出してくれないかな。
――イージーキャップはそんなに採用されてないですか?
【きだて】「オプテックス1EZ」と「2EZ」だけ。あのEZキャップが大好きで。要は、蛍光ペンのキャップを外すときに、指がインクで汚れちゃうので。EZキャップだととても幸せなんだよ。何とか全部盛りで。ゼブラの技術全部盛りの蛍光マーカーは欲しいよね。
【高畑】それは確かにあるね。
【きだて】だから、しなって、マイルドカラーで、にじまなくて、イージーキャップという。
【他故】しかも、2つ頭。
【きだて】そう「2EZ」ね(笑)。
――じゃあ、それは声を大にしてゼブラに言いましょう。
【他故】それを150円でと言ったら怒られるんだろうね。
【きだて】そりゃ、怒られるわ(笑)。全部盛り200円(笑)でお願いします!
【高畑】最近、いろんな機能が出てきたのはありがたいんだけど、「どれ買えばいいんだよ」問題が出てきているのは確かだよ。
【きだて】それだけ生態系が芳醇になっているのはいいことなんだけど。
【他故】まあね。
――蛍光マーカーって、意外に最近出ているんですよね。
【きだて】出ているんですよ。
【他故】やっぱり、学生さんがバリバリ使うものだし、目先が新しいものを買ってくれるというのはあるので、ちょっとずつはかたちを替えたいところはあるんですよね。性能で替えてくるというのは難しいから(笑)。
――インクが新しいというのも珍しいですよね。
【高畑】あと、使っていると割とインクがすぐ枯れるんだよね。
【きだて】あるある。
【他故】そういうときって、同じのを買うの? それとも違うのを使ってみようという気持ちになる?
【高畑】どっちもあるけど、お気に入りで替えがたいというのもあるな。
【他故】学生さんはどうなんだろう? どんどん替えていくのかな?
【きだて】替える可能性はあるけどね。
【高畑】まあ、そういう意味では、この「マイルドライナー」と「モジニライン」は統合してほしい気がするね。
――でも、他社のと比べて色味が大人しい気がしますね。
【高畑】そうだね、色味としては若干蛍光が弱い感じがするね。
【きだて】でも、このぐらいがありがたい。
【高畑】これなら、マイルドライナーができるかもしれない。
【きだて】あとは、三菱鉛筆と統合して、先端のチップを「プロパスウインドウ」にしてくれないかな。全部盛りもそこまで行くかという(笑)。
――それだったら、ノック式がいいですね。
【きだて】あ~、ノック式いいね。
【他故】やっぱり、直液式がいいんだけど。
【高畑】みんな自分勝手!
【きだて】欲望が止まらねぇな(笑)。
【高畑】でも、100円、150円に期待しちゃうわけだよね。でもすごいよね、ここにきてにじまないという新しいインクが出てきたんだから。まだやれるよ。プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。
弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売された。
【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう