【連載】月刊ブング・ジャム Vol.16前編
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.16前編では、最新ファイル&バインダーを取り上げました。
クリヤーホルダーの整理、持ち運びに便利!
「クリヤーホルダーファイル KaTaSu」(コクヨ) 個人持ちの書類を整理・活用するためのファイル用品シリーズ「KaTaSu(カタス)」の新アイテムで、クリヤーホルダーをファイルに挟むだけで手軽に整理できる。約10 冊のクリヤーホルダーを収容でき、表紙が大きく開くので、収容したクリヤーホルダーをページのようにめくって探すこともできる。案件別の整理に便利な背見出しや、持ち運びする際に中身を保護するフラップ付き。カラーは全8色。税抜450 円。
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――今回のテーマは、ファイル・バインダーです。
【高畑】ああ、ファイルね。「棚にファイルだけ買っといて」というやつだ。
【きだて】むっ、「たのメール」な(苦笑)。
――ちょっと古い(笑)。じゃあ、「KaTaSuクリヤーホルダーファイル」からいきましょう。
【高畑】“クリヤーホルダー”ね。
【きだて】この辺に関しては、とにかくジャンル名称がややこしい問題があって。コクヨとキングジムは「クリヤーホルダー」だけど、他は「クリヤーフォルダー」だったりして、メーカー間で統一が取れてないから、記事を書いていて頭がくらくらしてくる。
【他故】ああ~。
――「インク」と「インキ」みたいな。
【高畑】一番困るのはクリアファイルで、1枚入れるクリアホルダーのことをクリアファイルというメーカーがかなり多いんだよね。でも、ページがいっぱい付いているもののことをクリアファイルと言っているメーカーがあるので、そこだけ意味が重なってて困る。「ホルダー」と「フォルダー」は、保持するという意味の「ホールド」でホルダーと呼ぶか2つ折りする「フォールド」でフォルダーと呼ぶかだね。
【きだて】形状としては、ホルダーだと思うんだけどね。
【他故】ホルダーだろうね。
【高畑】インクとインキって、日本に入ってきたときの読み方の違いじゃない。それに比べて、ホルダーとフォルダーは意味が違うから。
【他故】そうそう、違っちゃうからね。
【高畑】まあ、どっちもありなんだけど。2つ折りで両側開いているのがフォルダーで、これはL字に留まっているから、ホルダーというべきかな。それで、コクヨさんはホルダー派なのね。
【他故】ホルダー派(笑)。
【きだて】そもそも、クリヤーホルダーとクリアファイルは、どっちがどうなんだと説明するのに本当に困る。文具店に来るお客さんも、どっちを買いに来られたのか確認しなきゃいけない。
【他故】「1枚のやつですか、製本されているやつですか」って聞かないといけない。
【きだて】だから、どこかでちゃんと名称を統一してくんねえかなと思うんだけど。
【他故】あれって、ファイル・バインダー協会が一応定めているんじゃないの?
【高畑】ファイル・バインダー協会は、ファイルとバインダーについては言っているけど、フォルダーとホルダーについては言ってたかな。
【他故】どうだっけ?
――これだけ氾濫しているということは、統一されてないんでしょうね。
【きだて】規格はないんじゃないかなぁ。
【他故】1枚はフォルダーっていう絵があったような気がするんだけど、ただフォルダーという言葉があったかどうかまでは分からない。
【高畑】協会のサイトを見ると、やっぱり「ホルダー」になってるよ。
【他故】こっちはホルダーなんだ。で、両方開いているやつはどうなの?
【高畑】「フォルダー」になっているよ。
【きだて】フォルダーなのか。
【他故】2辺留まっていればホルダーなんだ。コクヨは、これについては合っているんだね。
【高畑】一応、ファイル・バインダー協会の見解によると、2辺留まっているものに関しては「ホルダー」。で、紙製でよく見る2つ折りのやつが「フォルダー」ということだね。
【きだて】となると、今後は俺も文章を改めよう。
【高畑】ファイル・バインダー協会によると、ファイルとバインダーも実は違っていて、ファイルは綴じて置いていく用だけど、バインダーは書く用だから。ルーズリーフを綴じるのはバインダーだけど、書かずにポケットに入れる場合はファイルになる。
【きだて】じゃあ「カキコ」は?
【高畑】「カキコ」はその中間なんだよ。
――「カキコ」の話は後ほどということで。
【高畑】とりあえず、ホルダー・フォルダー問題はそういうことで。しかも、そのホルダーを入れるファイルというのは、ややこしいわっていう(笑)。
【他故】わはは(爆笑)。
【きだて】何かね~、錯綜しているんだけど、使うと便利なんだよ。
【高畑】そうなんですよ。冗談みたいな名前なんだけど、割とシンプルな造りじゃん。シンプルなんだけど、入れてみると便利っていう。
【きだて】造りに関しては、「えっ、これでいいの」っていうぐらいシンプルじゃん。
【高畑】留め方がさ、PP1枚もので容着してあるだけだから。
――すごいシンプルなので、見てびっくりしますよね。もう少しギミックがあるのかと思ってましたよ。
【きだて】「えっ、こんなもん!」って思ってたけど、使うと全然これで充分だし。
【高畑】コクヨの「KaTaSu」っていうシリーズが、“書く・立てる・捨てる”で「KaTaSu」なんだけどさ、基本になっているのが、このクリヤーホルダーを情報の1単位にしましょうということ。まあ、パケットみたいな考え方だね。
【他故】そうだね。
【高畑】それを基本に作っているんだけど、それが会社の中では意外と普通に使っているよねということと、それを入れ替えずに、そのまま取り込んで、そのまま出すので、運用上クリヤーホルダー自体はいじらない。最初買ったときに1枚だけ見出付きのクリヤーホルダーが付いてくるんだけど、そうじゃなくてもいいよということ。クリヤーホルダーはそこら中に散らばっているので、それを受け入れるものということ。
【きだて】実際、俺は以前、「クリヤーホルダーは会社の米だ」と表現したけど、要はこれが仕事の1単位であって、これ以上バラけると陽子と中性子みたいな話になっちゃうねということ。
【高畑】まあね。だから、1個の書類が移動するためのものという。
【きだて】これもう、1個の原子である。構成因子であると。
--なるほど。
【きだて】それぐらい、当たり前に社内で流通しているものだけに、それをまとめて持ち運ぶという概念が、何で今までなかったんだろう。
【高畑】そういう入れ物はあったんだよね。ブリーフケースみたいなものだとか、ファイルボックスみたいなのは。
【きだて】そうだよね。ただ、それはあくまでもクリヤーホルダーをストックするのが主目的だったりして、しかもそれをパラパラめくるという利便性はなかったわけよ。
【他故】まずこういうものを使うときに、単位でまとめるけども、自分の机の上でまとめるものだったからじゃない。でも今は、それを持って移動することが増えたので、今までにくらべたら移動距離が増えているんじゃないか。
(一同)あ~。
【他故】隣の人に渡すというレベルじゃなくて、それを持って会議に行ったり、またお客さんのところへ行ったりとか、すごい便利になったんじゃない。
【きだて】実際、客先に資料を配るのにクリヤーホルダーに入れたりするじゃない。配るのにこれに入れてシャッと取り出すと、まあスマートなわけですよ。
【他故】まあ、クリヤーホルダーを重ねて持っていると、ツルツル滑ってわぁって飛んでっちゃうわけだから(笑)。
【きだて】1単位という割には、まとまると扱いにくいという、非常に難儀な存在なわけじゃないですか。ツルツル滑って、バサバサ取り落とすっていう。
【高畑】それを、めくって必要なものを取り出したら、そこからは1個で仕事ができるので。閲覧してパッと見るだけとかだと、それは取り出すまでの入り口になるので。いわゆるバインダーみたいな、綴じたまま見てそれで仕事をするかというと、そうでもないし。出し入れするためのコンテナなんだけど、持ち運びもできて、閲覧もできると。ただの箱だと、それはそれで見づらいのよね、選ぶのが。
【きだて】フリーアドレスで持ち運ぶんだったら、取っ手の付いている「KaTaSu」のファイルボックスでいいんだけど、それだけじゃないんだよね。
【他故】そう。
【高畑】それで、この「KaTaSu」のシリーズは、ファイルボックスもあるし、外で仕事をするときのための…。
【きだて】あの“でかクリッツ”ね。
【高畑】そう。そういう布製のもあるし、いろんな種類がある中で、これはカバンの中にストンと入れておいて、客先でパパッと選んでサッと出すとか、あるいは外で仕事をするときに案件ごとに取り出して仕事をするとか。1つの案件を処理している間は机の上には置かないんだよね。
【他故】そうね。
【きだて】立てておくようなものでもないしね。
【他故】そうだね。まあ、立てておいてもいいんだろうけどね。仕事の案件とかで色分けしておけるから。クリヤーホルダーが便利だから、それで全部使っていると、いよいよどれがどれ用なのか分かんなくなっちゃうので、「●●用」って集積できる単位があるのはすごく便利だよね。
【きだて】そうだね。
【他故】居場所があると、間違わないというのもあるし。
【高畑】外出先でもらう資料がクリヤーホルダーに入っていたらめっけものだけど、そうじゃないときはここに空のクリヤーホルダーを入れておくと、もらったやつをその場で案件単位にしてこの中に入れたら、それだけで整理の一段階終わりという感じで楽でいいよ。
【他故】そうそう。
【高畑】空のクリヤーホルダーを2枚くらい入れておくと、その場で整理できるし。
【きだて】仕分けしやすいように、中に区切りも付いているしね。
【他故】それが2カ所あれば、もう一つに予備を入れておいてもいいし。これ、クリヤーホルダーが1枚付いているんだよね。
【高畑】それは、クリヤーホルダーを入れておかないと、何のためのファイルなのか分からなくなるから。
【他故】そりゃそうだ。
【きだて】分からないからね。
【他故】コクヨの製品としては随分と、簡素という言い方は変かもしれないけど、すごく単純明快な造りだなと思う。こういうのは、どっちかというとキングジムとかリヒトのイメージが強かったけど。
【きだて】リヒトっぽい。
【高畑】たしかにPPシートの工夫の仕方はリヒトっぽいよね。
【他故】そういうのをコクヨがやってきたんだという意味でも、このジャンルですごいニーズがあるんだろうなと思ったのと、コクヨさん自体がフリーアドレスということもあって、こういうのを使うという前提で考えているんじゃないかな。
――それはあるでしょうね。
【高畑】クリヤーホルダーを前提とした運用は、「KaTaSu」シリーズが出たことで、いろんな商品が出ているので。
【他故】そうだね。
【高畑】クリヤーホルダーに付ける見出し用のシールとかもあるし。
【きだて】クリヤーホルダー自体も何種類も出てるしね。インデックス付きのやつとか、ふせんをインデックスとして使えるやつとか。
【他故】まあ、枚数をたくさん使う人は別かもしれないけど、割といいクリヤーホルダーがあると、それを使いたくなるんだよ。ボロボロのやつはどんどん捨てていって、いいやつに替えるという(笑)。
【高畑】乗り換えていくこともできるしね。
【きだて】それは、根っからの会社員の発言だよ、他故さん。クリヤーホルダーをタダだと思っているんだ、あんたは(笑)。
【他故】タダじゃないよ。向こう(事務担当)から「そろそろ新しいのに替えませんか」って言ってくるぐらい、僕らはボロボロのを使ってるんですよ。
【高畑】でもね、やっぱり回り物なんだよ。ビニ傘みたいに。
【きだて】ビニ傘を回り物って言うな!
【高畑】「誰が持っていったんだよ」みたいな(笑)。
【きだて】フリーランスの一番下流の立場に立つと、クリヤーホルダーは出て行くだけのものなんだよ。
【高畑】いや、そうでもないでしょ。
【他故】回ってこない?
【きだて】主に、こちらから物を渡すことになっちゃうことが多いの。
【高畑】渡すときにはきれいなのを使いたいから、きれいなのを買っちゃうけど、俺はもらった書類が入っていたクリヤーホルダーは、中身を使ったらストックしておく場所があって。
【きだて】もちろん、再利用するよ。
――展示会に行くと、クリヤーホルダーもらえません?
【きだて】展示会に行くともらえる。でも、そんなにいいのもらえないじゃないですか。
【高畑】社名入ってたりするからね。だから、渡す用には使えないけど、自分用には使えるからね。
【きだて】まあね。
――確かに、何かの社名やロゴがプリントされたものを、相手に渡すわけにはいかないですね。
【きだて】毎回、そういうので気を遣うわけですわ。やっぱり、会社に入り直すと、「ああ、クリヤーホルダーってタダだ」って思うんだよ(笑)。
【他故】フリーだと、自分でお金出して買ったやつが出て行っちゃうわけだからね。
【きだて】やっぱね、消耗品だなって思うんだけど。
【高畑】あれ消耗するよね。使っていると、だんだん傷がついたり、折れたりするから。
【きだて】そう。で、クリヤーホルダーって、カバンに直で入れていると傷がつくんだわ。
【高畑】折れるしね。
【きだて】だから、このファイルに入れちゃうのはいいんだ。
【高畑】保ちはよくなるよ。
【きだて】断然よくなるね。
【他故】書類がこぼれにくくなるしね。
【高畑】1枚だけだとね、何やかんやでカバンの中で折れるんだよ。
【きだて】安いクリヤーホルダーほど折れます。
【他故】ここに入れておいたら、衝撃でポロリといくことがないので。
――クリヤーホルダーって、いろんなところから書類ごともらうので、とりあえずここに入れておくんですよ。
【高畑】書類が、案件ごと要らなくなったらスポッと抜けるから。あと、「今日持ってくやつ」「持っていかないやつ」って分けられるから。
――たまに見返して、要らないものはそのまま捨てられますから、いいですよね
【他故】そうですよね。
【高畑】もらってきたクリヤーホルダーのストック用としては、マチのある封筒のでかいやつみたいなのがある。それが、クリヤーホルダーがきれいに入る大きさなので、そこに透明なクリヤーホルダーを入れている。だから、「KaTaSu」シリーズは、何やかんやで便利なんですよ。
【きだて】この間、霞ヶ関にあるコクヨのライブオフィスに取材に行ったのよ。もうね、「モバコ」と「KaTaSu」シリーズだけで運用しているね。システムが完全にそれ用になってる。すごいね。
――これ、背幅が変えられるんですね。
【高畑】ちょっとだけね。いっぱい入ると若干広がるくらいですよ。
【きだて】まあ、マージンぐらいの感じだよね。
【他故】あんまり重たくなっちゃうと、持ちにくくなるからね。
【きだて】いっぱい入れると、フラップがきれいに閉じなくなっちゃうから。
【高畑】20枚くらい入るんだっけ?
【きだて】コピー用紙を何枚か入れて10枚かな。
【他故】クリヤーホルダー1枚にPPC用紙10枚挿入したものを10枚だよ。
【きだて】だから、コピー用紙100枚だ。
【高畑】2、3枚程度しか入ってないものだったら、もうちょっと入るね。今アクティブに動いている案件の書類が入るよという感じなので、大体そんなものじゃない。自分が動かしている仕事というのが。
【他故】それ以外に、「また後でね」というやつは他のところで集積していると思うので。
【きだて】後はね、積んでおいても滑らないし、立てておいてもヨレっとならないクリヤーホルダーを早く開発してほしいね。
【高畑】それは、キングジムの「スーパーハードホルダー」じゃない?
【きだて】「スーパーハード」でも滑るんだよ。
【高畑】ああ、表面はね。それは、PP素材のいいところと悪いところの両面だからね。
【他故】じゃあ、紙でいいじゃんってなるよ。
【きだて】結果そうなんだけどね。
【高畑】そうなると、コクヨさんで出している紙のホルダーの方が。
【きだて】それだと、分厚くてかさばるんだわ。
【高畑】人間はなかなか難しいね。
【きだて】でも、そういうのが出てくれたら、完全にクリヤーホルダーに入れっぱで書類を後々まで管理する体制が取れるので楽なんだけど。
【高畑】中が見えるから透明の方がいいしな。
【きだて】そう。
【他故】穴をあけると強度が落ちるし。
【高畑】クリヤーホルダーのいいところは、中身が見えるからタイトルとか書かなくていいじゃない。
【きだて】そういうこと。
【高畑】封筒ファイリングも薄くて軽いから便利なんだけど、タイトルを書かないといけないから。
【きだて】中が見えないからね。
【他故】毎回開けないと分からないから。
360°折り返して使える!
――次は、ファイルではなくてバインダーです。360°折り返せる「コンパクトバインダー」です。折り返せるというところで、文とび読者からの反響が大きかったです。
【高畑】バインダーで折り返すって難しいんだよね。これはルーズリーフピッチだよね?
【きだて】そう。リヒトだけどツイストリングじゃないよという。
【高畑】このリングの機構がやっぱりいいよね。普通のリングバインダーに比べると、留まっているところが軸が1本だから、こういう綴じ方ができるんだよ。
【他故】面白いなこれ。
【高畑】ルーズリーフバインダーって、基本的には背中にマチがどうしても必要というのがあって、ひっくり返せないんだけど。ひっくり返せるタイプというのは…。
【きだて】そういうのがあったの?
【高畑】ちょっと特殊なのがあって、表紙もリングにかましてあるやつ。
【きだて】あ~、はいはい。コクヨの「スマートリング」だ。
【高畑】そう、コクヨとかでやっているやつ。表紙もリングにかませてページと同じ扱いにすると、ほぼほぼ折り返しできますよという。
【他故】その代わり、リングの金具が出ちゃう。
【高畑】そう、出ちゃう。っていうぐらいしか折り返せるのがなくて、表紙の内側にリング金具が付いているのにもかかわらず折り返せるのって、実はないんだよね。折り返せなくはないけど、背中のマチの部分はどうしてもあるので、どうしても高さが出ちゃう。
【きだて】そうだよね、そうなっちゃうんだよね。
【高畑】これはね、ペタッと折れるんだよね。そのために、リングのベースの部分が平たい横付けになってるんだよ。
【きだて】そうだね。
【他故】これすごいな~(笑)。
【高畑】「フラットです」というだけのことはあって、なかなかちゃんとしてるんですよ。
【他故】フルフラットだ。すごい。
【きだて】これ、面白いね。
【高畑】面白いでしょ。よくできてるんだよ。横から出た板に1つ穴があいていて、この留め方ができるのは、ツイストリング以来の独自のリング機構だから。この、リングをずらして開けるのが、なかなか面白いですよ。
【きだて】このワンプッシュで開くの、なかなか気持ちいいしね。
【高畑】これと似たようなやつで、表紙が付けられるタイプでリングだけというのが「アクアドロップス」にあったけど。
【他故】あったね。
【高畑】そのときは2種類あって、1/3インチピッチのも、リングだけっていうのがあったんだけど。紙的にはルーズリーフの方が普及しているからな。B5にするんだったらこっちの方がいいよね。
【他故】これB5だけですか? A5はなくて。
――B5だけだったと思います。
【きだて】学生が使うから、B5だけじゃないかな。
【高畑】学校のノートを使うんだったら、ルーズリーフは紙があるから。1/3インチピッチだと、ないと数枚ずつ穴をあけるか、ノートをばらすという作業が必要だから。
【きだて】そうなっちゃうからね。
【他故】A4は出してもいいと思うんだけどな。A4は元々1/3インチピッチがないから。
――でも、B5しかないようですね。
【他故】まあ、圧倒的に売れるのはB5でしょうけどね。
【高畑】フルで折り返せるバインダーでかつでかいリングというのが、やっぱり魅力かな。
【きだて】これで100枚?
【高畑】100枚入るタイプと、40枚入るタイプがあるね。100枚入れられるやつで、折り返せるというのはなかなかですよ。
【他故】「テフレーヌ」はできないんだっけ? というかそんなに入らないんだっけ?
【きだて】どうだっけかな?
【他故】「テフレーヌ」の大きい方のリングは、100枚も入らないかな。
【高畑】100枚入るリングはあるけど、100枚入るリングで表紙を折り返せるのは他にない。
【きだて】まあそうだな。
【高畑】「テフレーヌ」はリング外側に出てる系でしょ?
【他故】そう、出てる系。
【高畑】そうなんだよ。
【他故】出てないのはこれしかないんだ。
【きだて】出てない方が、表紙を閉じたときに見た目的にもスマートだしね。
【他故】あと、カバンなんかに入れることを考えたら引っ掛からないし、並べて置いたときにも見た目がきれいだしね。
【高畑】「テフレーヌ」も、ワイドになると表紙が付いているから、ひっくり返せないし。
――「テフレーヌ」はワイドだと90枚ですね。
【高畑】このリングの発明がなかなかすごいね。何にでも使えて。
【他故】まだ、バインダーが進化できるんだっていう。
――そのリングは使っていて全然恐くないですね(笑)
【高畑】つい指をパチンとはさむということがないから。
――金属じゃないし。
【高畑】逆に、おしりに敷いたら壊れるけど。
【他故】まあまあ(笑)。しかし、これいいな。
【きだて】軽いしね。
【高畑】軽いよね。
【他故】これは、またバインダー買い換えだな。最近、ルーズリーフに回帰しているので、また選択肢が増えた。
【きだて】ルーズリーフバインダーとしては、画期的に軽いぞ。今、ルーズリーフバインダーを買うんだったら、これをすすめるね。これはエポックな商品かもな。
【高畑】言わなきゃ地味なんだけど、なかなかいいっすよ。
【きだて】360°折り返せるというところだけを大きく言っているけど、そうじゃない部分もすごくいい。「ツイストノート」といいこれといい、リヒトのリングはいいね。
【高畑】いいよ。
【きだて】俺はずっと「ツイストノート」派だけど、ルーズリーフ使うんだったらこれだな。俺、どんだけリヒト好きやねん(笑)。
【他故】これは買いだな。
【高畑】コンパクトなんだよ、リングが。普通は、リングの開閉のために裏にバネとかが付いているんだけど、それがこれは軸の中に通っているんだよ。
【きだて】そう。
【高畑】これがめちゃくちゃコンパクトで、普通はバインダーの根元にどうしてもボリュームが出ちゃうんだけど、それがほぼないんだよ。
【きだて】こんだけでよかったのかっていう。
【他故】ねえ。
【高畑】でも、閉めようとしたときには、リング同士が引っ掛かるように、ななめに力がかかるようになっているから。
【きだて】その辺はツイストリングと同じだよね。バネだって、これだけだものね。
【他故】真ん中に1本だけだ。
【高畑】これだけ上手なリングはないよね。
【他故】合わせがしっかりしているってわざわざ書いてあるけど、本当にその通りで、これだったら紙をかんだり抜けたりしないよね。よく紙が抜けたりするんだけどね。
【きだて】しないね。
【高畑】樹脂だから軽いし、危なくないし。一発で開くのもすごいよね。樹脂のリングだと、どうしても1個ずつ外すやつになっちゃうじゃん。
【きだて】そうね。パチン、パチン、パチンって。
【高畑】いやー、本当に完成度高いよ。
【他故】特に弱点らしきところがないね。
【きだて】今、岩下の新生姜の社長がツイッターで問題提起していて。娘が中学生で、通学のカバンを量ったら重さが12キロもあったと。だから、「置き勉させてくれないか」と学校に働きかけて運動しているんだって。確かに、今の中高生のカバンの重さって異常なので。
【他故】まあ、そうだね。
【きだて】ちょっとでも軽くするように、文房具業界は動いた方がいいんだよ。
【高畑】増えたの? それとも前からそうだったの。
【きだて】増えたと思う。まず、テキストが俺らの時代よりも圧倒的に増えてるから。
【他故】そう、増えているのと、あと1冊がちょっとずつ重くなっている。フルカラー印刷になってたりするので。あとは、学校に物を置いちゃいかんというのが徹底され過ぎていて、何でも詰め込んで持って帰れってなってる。
――昔は、引き出しに入れたままで帰っていたような気がしますが。
【きだて】今は、「机の中は完全に空にしろ」という指導らしいので。
【高畑】いじめとかの問題もあるし、盗難があったときに責任とれないから。
【きだて】まあ、そういうことだろうね。
【他故】それプラス学習の問題もあるだろうしね。「教科書持って帰らないでどうやって勉強するんだ」というのも当然あると思うので。
【高畑】科目別にノートを持たずに、ルーズリーフで1冊にするという学生さんも多いので。ただ、ルーズリーフってルーズな人には向いていないので。段々バラバラになっちゃうとよくないから、そこら辺は自己管理で。
【他故】そうだね。
【高畑】ゲージパンチを持っていれば、もらったプリントを貼らなくてもいいから。
【他故】綴じちゃえばいいからね。
【きだて】プリント学習も、度が過ぎるとプリントだけで重くなっちゃうから。
【他故】あれはノートに貼るから、ノートの重さにプラスになっちゃうから。
【高畑】学生に大人の技術が下りてくるのはよくある話で、こういうものも含めていい製品を使っていくというのは、負担を軽くする意味でもいいのでは。
【他故】チラシに載っているイメージ写真を見ると、学生が使うものには見えないね。
【高畑】でも、B5のルーズリーフを使うのは、何やかんやで学生だよ。
【他故】確実に学生だね。中高生だよね。
【きだて】大人が使うサイズではないです。
【高畑】仕事の都合でA4かA5を使うことが多いけど、B5が日本人の体のサイズには合っていると思うよ。
【他故】これがまたね、B5を横にして使うと気持ちいいんですよ。A5だと小さいし、A4だと置き場所に困る瞬間があるから。
【きだて】それは分かる。
【他故】今自宅だと、折り返せるものでルーズリーフを置いてというパターンが多いので、早速これに切り替えようかな。
【高畑】なので、ルーズリーフ派は一度お試しください。
書類を入れたまま書き込める!
――じゃあ、最後は「カキコ」です。
【きだて】とりあえず、自分で買ったのは奥さんに取られました。
――あら(笑)。
【きだて】うちの奥さんは趣味でボーカルスクールに通っているので、楽譜を入れるのにこれを使ってる。A3の楽譜があったりして、しかもスクールだから楽譜に書き込みをしていかないといけないから。「カキコ」とほぼ同じ構造で、譜面綴じ用のものは確かにあったんだけど、高いのよ。1,000円以下では買えない。
【他故】まあ、ニーズも少ないだろうしね。
【高畑】そういうのの書き込みには便利だよね。
――他故さんもこれを使ってますよね。
【他故】会社で、各部署のマニュアルを見ながら質問をして、その答えを収集するという仕事をよくしているんだけど、マニュアルを「カキコ」の左側に入れておいて、右側には白い紙を入れておいてそこに書き込んでいくというのが1冊でできるので、ものすごく楽ちん。
【高畑】総務で備品の貸し出しをするときに、一覧表に誰が何を持っていったか書き込まないといけないけど、それがクリップボードに留まっているでしょ。それで、いっぱいクリップボードがあったりしてジャマなので。
【きだて】あ~、分かる。
【高畑】これだと1冊で済むし、一杯になったら差し替えるだけで済むので。これは、そういうところに使いやすい。
【他故】そうだね。
【高畑】入館管理とかもね。訪問者の名前とか、入館時間とかを記入する紙はどんどん入れ替えるので、そういうものを入れておくのにもすごい便利。
【きだて】これ、「クリヤーファイル カキコ」っていう名前になっているけど、クリヤーファイルって、ポケットになっていてそこにどんどん書類を入れていくじゃない。
【高畑】はい。
【きだて】クリヤーファイルって、書類を入れた瞬間に、その書類は死ぬんだよね。
【高畑】死ぬというか、終わるんだよね。
【他故】標本化するわけだ。
【きだて】後で見返すためだけのものになっちゃう。で、「カキコ」って、書類が生きたまま使うものなので、クリヤーファイルとは明らかに用途が違うんだよね。
【高畑】そう。それが最初の方で言いかけた「ファイル・バインダー」の話で、これはファイルであり、なおかつバインダーなんだよね。
【きだて】うん。
【高畑】基本的にバインダーは、書き込める状態においておけるものなんだけど、それが今までバインダーで穴をあけずにやる方法がなかったんだよ。
【他故】ほぼなかったんだよ。
【きだて】Zファイルぐらいだよね。
【高畑】Zファイルも全部綴じちゃうので、書き込む用ではないんだよね。
【きだて】そう。めくる途中で書き込むのは難しいよね。
【高畑】穴もあけずに留めてあって、しかもその場で書き込めるという、バインダー機能を持ったファイルという。
【きだて】生きた書類をちゃんと綴じて活かしておけるという、生け簀のような希有な存在なんだよね。
――これ、書き込みしなくても、取り出しやすいから、それだけでもいいですよね。
【他故】めっちゃ楽ですよ。
【きだて】もっと言うと、クリヤーホルダー代わりに使えるから。正しい使い方ではないけど、この1ページに書類を何枚かまとめて入れておけるんだよね。
【他故】それで全然問題ないよ。
【高畑】さっきのやり方だと、未記入の紙を裏に1、2枚入れておくこともできるので。
【他故】予備があるというのはいいよね。
【きだて】画期的だよね。この生け簀システムは本当に素晴らしいな。
――売れているみたいですね。
【きだて】なかなか入荷しない店もあるくらい。
【高畑】そんなに売れてるんだ。これは、全国の総務とか入館管理業務の人に使ってほしいなとちょっと思ったりします。
【他故】まだ紙を使っているそういうところでは特にね。
【高畑】これは、みんなに書いてもらうものとか、あるいは上司に「ここ確認してください」とかその場でできるので。
【他故】あと、レタートレイにその課で必要な書類を全部コピーしてストックしてあって、それを持っていってもらうみたいな場合なんかでも、これ1冊を立てかけておくだけで済むので、スペースが小さくなるよね。うちの職場でも、「物を置くな」と言われていたりするので、こうやって立体的にまとめられるのは面白いんじゃないかな。
【きだて】文房具を立たせるのが大好きな他故さんにとって、面目躍如だね。
【他故】やっぱりね、立っているのがいいんですよ。寝てる書類は死んでる書類なんだから(笑)。
【高畑】そう、生きている書類なんだよね。でも、基本的には「あんまり書類を入れないで」と言われているんだけど…。
【他故】確かに、40枚用でも1つのページに何枚も入れるときつくなっちゃう。
【高畑】入れすぎて緩くなっちゃうと、留まんなくなっちゃうから。だから、あんまり入れない方がいい。だから、予備で1枚程度かなと思うけど。
【他故】ちゃんとペンホルダーも付いているしね。
【高畑】A4じゃない紙は入らないけど、だから小さい紙が入るポケットが表紙裏に付いているしね。まあ、書類はほぼA4だからな。
【きだて】A4かあるいは大判でA3。これはそのどっちでも対応できるからね。
【他故】A3が入れられるものってなかなかないからね。そういう意味ではすごくいいよ。
【きだて】だから、図面とか持ち歩く人はすごく便利じゃない?
【高畑】開けて書き込みができるから。
【他故】エクセルで表を作ると意外と詰め込んじゃって。それをA4で縮小すると見えないから、A3で出力したい。けど、持ち歩けないからというのがあったから、すごく便利なんですよ。これはとてもいいです。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。
弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売された。
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