【連載】月刊ブング・ジャム Vol.03前編
そのカタチにこだわりアリ!
高畑編集長(右)と他故さん
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vo.03前編では、ユニークなデザインの文房具について激辛トークを繰り広げました。
*きだてさんは怪我で入院したため、今回は欠席しました。
デスクになじむ、片手で使えるはんこ
――今回は、変わったかたちの文房具を集めてみました。
【高畑】ここにきだてさんがいないのは痛いよなぁ~。
――きだてさんのために集めたようなものなのに(笑)。
【高畑】きだてさんのための企画なのにいないという。今日は、ちょいちょいその辺りを突っ込みながらやりましょう(笑)。
――まずは「キー印」からいきましょうか。
【他故】キーボードスタンプね。
【高畑】これね、展示会で見ていきなり「作って」ってお願いしたんだよ。「文具王」と「高畑」の2つを作ってもらったんだけど。これがね、なかなか面白いんだよね。
【他故】かっこいいよね。使うときは下のフタを外すの?
【高畑】そう。キーを押すだけで外れるんだよ。持ち上げてキーを押せば底が外れて落ちるので、そのままポンと捺す。使い終わったらそのままキャップに乗せるみたいにはめればいい。だから、完全に片手で使えるの。いわゆるシヤチハタタイプの浸透印みたいに、両手でキャップを外してまたはめるという手間がないので。
【他故】そう、それが面倒だなぁといつも思っていたので。
――片手でできていいですね。
【他故】一緒に入っているこれは何?
【高畑】これはね、注文して届いた印面をセットするときに使うジグなんだよ。
【他故】あー、はいはい。セットするときに、これを使ってはめるのね。
【高畑】ジグに印面を入れて、ギュッと押し込むと入るよ。
【他故】至れり尽くせりじゃないですか。
【高畑】キーボードのかたちで捺せるというイロモノ的な面白さはあるんだけど、それ以前に結構便利。机の上に置いておいても、ヨコに比べてタテが長くないので転ばない。
【他故】そうだね、ハンコとしては短いよね。
【高畑】転ばないから机の上に立てて置ける。他故さんの大好きな、立てて置ける文房具の1種だよ。
【他故】うん、これいいね。
【高畑】で、片手オペレーションができて、片手でしまえるというのがあるから、机の上に置きっぱなしでいいかなと思う。
【他故】片手でフタがというのは、かたちから全然想像してなかったから。
【高畑】あと、AからZまでとEscが選べるよ。
【他故】キーの種類が選べるんだ。買うときに選ぶの?
【高畑】お店に箱があって、全部並んでるの。その中から自分の欲しいのを抜いて、webで印面を注文する。
――印面は、名前じゃなくてもいけますよね。
【高畑】何でも作れるので、「済」とかを作ってもいいし。
【他故】「漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字、各パターン6文字まで。6書体・6色から選べる」。結構幅があるじゃないですか。
【高畑】印面を作っているのは、浸透印やゴム印の老舗のサンビーだから安心だよ。
――キーのアルファベットと印面をリンクできますよ、という提案もしていんるですね。
【他故】Mだから「森さん」みたいにね。
【高畑】俺は、「文具王」のBと「高畑」のTの2つを作っているんだけど、それが上から見て分かるよということだね。
【他故】Eで「いいね」とかあるね。血液型がBの人とか。
【高畑】特注印なので、そういう意味を作って「確認」とか「承認」とかも作れるよ。
【他故】四角くて、真っ直ぐ捺せるメリットがあるんだよね。
【高畑】きちんと真っ直ぐ捺したいという需要もあるからね。
――印面はめるときに、向きだけ気をつけないと(笑)。
【高畑】そこだけ大事。後から直そうとするとしんどいので。
【他故】印面をななめに入れた場合は、ジグをくっつけてグリグリ回すと説明書に書いてありますよ。
――グリグリ回すんだ。
【他故】本当に無理な場合は「セット器具に両面テープをつけて回しながら抜き取り、再度セットしてください」とある。
――裏技だ(笑)。
【高畑】きっちりはまっているからね。
【他故】印面がそう簡単にずれちゃまずいだろ。
【高畑】たぶん、ラジオペンチを使えば向きを変えられると思うけどね。
――これ、意外と安易にやってしまう人がいるから。
【高畑】「よし、分かった!」と言いながら、上下間違えて入れる人はいそうだよね。
【他故】使ってみたら「おや?」っていう(笑)。
――しかも、「S」だと上下がいまいち分からないし。
【他故】まあ、キーボードを本当に知っている人じゃないときちんとイメージできないですよ。
【高畑】でもね、これデスクの上に置いていても割と違和感ないよ。このかたちが結構いいよ。
――それは違和感ないですよ。キーボードと同じかたちだから。
【他故】非常に見覚えのあるいい感じで。
――間違えて押しちゃったりして。
【他故】これがズラッと並んでいれば押したくなるかもしれないですが(笑)。
【高畑】これ、ネタ的にも、上司にハンコをもらいに行く時に、これでポチッと捺してもらうとかね。
――そうですね。
【高畑】でも、見た目以前に、真っ直ぐ捺せるとか、片手でできるとか、普段机の上に置いておいてジャマじゃないし、倒れないしということを考えると、単なるイロモノではない。割と完成度高いよ。
【他故】普通のネーム印が転がっているよりは安全かもね。知らなければ、これがハンコだと分からないかもしれないし。
【高畑】ああ、そうね。
――転がることはまずないですよ。
【他故】転がってどこかへ行っちゃうということはないですよね。いいな、これ。欲しいなと思いながら、なかなか手が出なかったので。これいくらだっけ?
【高畑】2,500円くらいじゃなかったけ? ちょっと高いけど。でも、贈る相手の名前で作ってあげるとか、ギフトにもいいよ。
――ギフトいいですね。
【高畑】捺したときの感触が、割とキーボードっぽいんだよね。
【他故】いいよね。
【高畑】キーボードっぽくなるように、多分中のバネとかが上手くできていると思うんだけど。
――それは、キーボードの押し心地を再現しようとしてるんでしょ。
【高畑】多分、こだわっていると思うよ。
【他故】メカニカルっぽい。メンブレンじゃないよ。思ったよりいいな。
【高畑】面白いし、普通に便利。
【他故】持ち歩くことを考えなければ。机の上に置いておくものとしてね。
【高畑】これ、キーだから文字が選べるというところも良いところで。ただお店の人は、店頭の在庫で全部を揃えておくのが大変だけど。
【他故】まあ、そうだね。売れる文字と売れない文字があるだろうし。
【高畑】それはあるみたい。下の名前のイニシャルで使われないのが多いんじゃない?
【他故】そうね。日本人のイニシャルには絶対に使われないアルファベットがあるからね。
【高畑】Pから始まる名前の人って、あまりいないじゃん。
【他故】Vから始まる人もいないよ(笑)。
――Vはいないですよね。
【他故】「Xさん」もいないな~。格好良くてXを使う人はいるかもしれないけど、名前としてはね(笑)。
【高畑】そういう時は、何か意味合いを持たせて作ることはできるかな。
――シャレっぽい感じでしょうね、Xだと。
【他故】見本には、「田中さんの愛車はZ」とありますよ(笑)。
【高畑】それはちょっとな~。
――水木一郎だとやっぱZなんでしょ。
【高畑】水木一郎のZはアリだな。
――「Esc」はどうするんです?
【他故】それは、オフィスでよく使う文言をオシャレにするとか。
――あ~、なるほど。
【高畑】あれだよね、「Enter」とか「Shift」とかは、そもそもキーのかたちが違うからできないんだよね。
【他故】たくさん文字が入れられるようにすればいいかな。
【高畑】スペースバー捺したら住所が出るとかいいね。
――住所印いいですね。
【他故】このシリーズでね。
【高畑】住所印いいね、それ欲しいなぁ。住所とか電話番号とか、Eメールアドレスとか。
【他故】そうね。
【高畑】Eメールアドレスはそれほどでもないけど、住所はよく書かされるからね。
【他故】住所はありえるからね。
――きだてさんがいたら、ここで面白いコメントが出るんですけどね。
【他故】僕らだけじゃ、真面目な話になっちゃうからね(笑)。
その造形に脱帽
【高畑】「こはる」自体は前からあるし、前にはもうちょっと四角いかたちだったけど、今回はあえて「家」。これが、思ったよりこの家がきっちりできているんだよね。
――これ、北欧風なんですよね。
【高畑】北欧風なんだ。
【他故】そういうシリーズなんですっけ? 今回は。「ヒトトキ」というブランドで…。
――「ヒトトキ」というブランドを立ち上げたんですよね。(*こちらの記事も参照)
【高畑】そういう「素敵ライフ」みたいなのを提案するブランドなんだよね。
――フィルムテープが印刷できるんですよね。
【高畑】これに合わせて新しいテープが出たんですよ、フィルムテープが。これがちょっとおしゃれなのよ。
【他故】前はマステを出してたでしょ。
【高畑】マステのも良かったんだけど、デザインが割と大人が使えるかわいいものになってる。この新しいテープが出たのも結構大きい。柄がおしゃれなのと、フィルムなので水にもちょっと強いぞという感じ。
【他故】これって感熱紙じゃなかった?
【高畑】そう、これと「ひより」と「テプラLite」で使えるやつ。
【他故】で、ここでサーマルで。
【高畑】直接サーマルなので、感熱テープなんだよね。あっ、すごい。フタを開けるとカッターが下りないようになってる。これさ、入口のドアがかわいいんだよ。電源スイッチになっているの。で、プリントのボタンが窓で。
【他故】カッターが煙突で、裏の窓からはテープの様子が見れるという。何だこれ(笑)。
【高畑】何でしょうね、このあざとい設計というか。でも、よくできているよね。この外形のデザインをこのように仕上げてきたのってさ。前から思ってたんだけど、こういう道具って、「使わない時にどうする」問題というのを昔から言っているんだけど。テプラの大きいやつでも、アダプターをどうするのか? とかあるじゃん。
【他故】あるね。
【高畑】これは、比較的置いておいてもジャマにならないデザインだし。要は置物としてデザインされているんだよね。
【他故】そうだよね。普段は飾っておいて、必要があれば使うという。
【高畑】これは最小限の機能しかないので。改行もできないし、メモリーもできない。
【他故】テプラって、欲しいなと思っても、思ったよりインテリアに合わなくて。自分の家に置いておくと、使ってない時が格好悪い気がする(笑)。
【高畑】事務用品っぽいデザインではあるよね。それが嫌いな人にとってはそうかもね。この「こはる」の北欧デザインというのは、置いておいても何となく違和感ない。
【他故】嫌みな感じはないんじゃない。白とグレーで。
【高畑】いい感じに作るな~。
【他故】これなら買ってもいいかなと思うもんな。
【高畑】意外とコンパクトだし、立てて置けるのはいいよ。
――ああそうか、これも立てて置ける文房具だ(笑)。
【他故】何にしても、立てて置けるのはいいんですよ。
【高畑】他故さん出たね~。
【他故】コンパクトに置いておいて、必要なときにサッと取り出せるのは、立てて置いておけることがベストなんですよ。
【高畑】そうだよね。それ大事。で、これ四角いやつって色々あるんですけど、ちょっと斜めってるだけで安っぽく見えるけど、これがカチッと四角いんだよね。このカタチはいいよね。
――前の「こはる」とちょっとイメージが違いますね。
【高畑】前のは取っ手が付いているんですよね。
【他故】カバンみたい。
――そう、カバンみたいですよね。
【他故】本当にガーリーなイメージだったんですけど。
――これはこれで、ちょっと変わった感じで。
【他故】今流行っている北欧デザインってこんな感じなんですかね? 割とモノクロームな感じで。
――カラフルではないですね。ちょっと渋いかな。
【他故】色塗っていないムーミンみたいで、割とグレーがメインになってますよね。でも悪くないですよ。
【高畑】こういうことも考えるようにようやくなってきたというか。
【他故】「新たに縦横切替え機能が加わりました」と書いてある。今までの「こはる」は横しかできなかったんだ。
【高畑】これ切り替えると縦書きになるんだよ。
【他故】縦書きができるようになったんだ。で、光沢のあるフィルムテープが仲間入りしたと。フィルムテープは、表面で水をはじく感じだね。前のはマステで和紙っぽいやつだったから。
【高畑】これ、簡単でよくない? ラベルとか作るんだったら、これでいいよね。
【他故】全然いいじゃない。
【高畑】機能を制限していてメモリーもないけど、その時に必要なものをその時に作るという感じだね。
【他故】でも、それがテプラの中で一番使われる使い方なんでしょ。同じ物を定型で出力し続けるオフィスでの使い方と違うから。
【高畑】だから、そういう機能は要らないんだよね。多分、ファイルの背中だったり、ビンや引き出しににラベル貼るとか、そういう使い方だろうね。
【他故】デザイナーさんの使用例を見ると「すげーな」って思うけど、こういうことを思いついたりする女性も多いんでしょうね。ブーケを家の中に貼っちゃうとか。
【高畑】こうなってくるとあれだけど、もうちょっと簡単に、プレゼントに貼るとかさ。やっぱり日常的に多いのは、ファイルに貼るとかさ…。
【他故】ビンに貼るとかかな。耐水のテープが出たというのは、こういう用途があるからじゃないかな。
――キッチンとかの水回り系でしょうね。
【他故】ラベルが水に濡れちゃって「あっ」ということがあったんでしょうね。
――確かに、マスキングテープだとね。
【他故】濡れるとシワシワになっちゃいますからね。
【高畑】これ、好きなテープを入れっぱなしにして、ずっと置いておけば。要るときにピッと立ち上げて、使えばいいんだから。
――乾電池だからすごい手軽ですよね。
【高畑】もう、これでいいよね。
【他故】テープの種類が10種類。マステは貼ってはがせるけど、フィルムの方ははがせるとは言っていないんだね。だから、テプラのテープの代わりになるんですね。
――ビンに貼るような使い方ですよね。
【高畑】テプラのテープってでかいし複雑だから、これでいいんだったらアリだよね。
【他故】そうそう、あのカセットが置いとくとジャマだったりするからね。
【高畑】ちょっと変なかたちだからね。しまうときに、どうしても収まりが悪い。で、これテープがゆるまないように、片面が接着してあるのが面白いよね。
【他故】いや、気がつかなかったよ。そうなんだよね。それだと中でばらけたりしないよね。
【高畑】シュルシュルッと広がっちゃうと困るんだけどね。
【他故】これって、使っている途中でもわざわざ保存できるように、袋にジッパーが付いているんだね。
――あー、そうですね。
【高畑】裸で置いておくわけにいかないからね。
――マステとフィルムを使い分けたいときにいいですね。
【高畑】テープを複数使いたい人はいると思うけど、そういう意味ではケースとかできるといいと思う。
――これは、電源落ちると打った文字も消えちゃうんですね。
【高畑】毎回リセットだね。潔いというか何というか。
【他故】いいんじゃない、それで。
【高畑】それにこの大きさじゃん。いつものテプラの大きさを考えたら、「こはる」はこれでいいんだよね。
【他故】前に打った文字が残っていて便利かというと、そういうシーンはない気がする。このパターンだと。前のを消してから、新しいの作る方が面倒くさい気がする。
【高畑】何文字までいけるか分からないけど、般若心経全部打ち込んだけど電源が切れたよみたいな。
【他故】最大入力文字数は62文字だって。
【高畑】もう割り切りだよね。初代テプラよりメモリーできないし、潔いというか。2段印刷もそもそもできないし。
――これで6,800円(税抜)ですね。
【他故】何か、悪くない気がしてきましたよ。
――これ、箱もかわいくないですか。
【高畑】箱もかわいいんだよ。「お前、どこかのお菓子屋か」っていうかわいさだよ(笑)。
――これ、開けるときワクワク感とかありません?
【高畑】あるある。いや~、女子部立ち上げてからのキングジムのこのね、あざとかわいい感じ。その割に、仕上がりがきれいだから許せるんだよね。
【他故】そうそう。
【高畑】仕上がりがすっごい安っぽくて嫌な感じになるところを、これ面がすごくフラットにできてるじゃん。これがちゃんとしているから、このデザインがみんな納得できるんだと思う。これは多分、仕上げの問題だよね。
――雑っぽさがないということですね。
【他故】本当に雑貨、雑貨しているやつが出てきちゃったら、「えー」ってなるところを、逆にカッチリきたというのがね。
【高畑】これ、上手にやらないとチープなデザインになっちゃう。デザイナーがきれいに描いても、製造部門がちゃんと作らないと、こういうのってダッサダサになっちゃう可能性があるのでね。
【他故】写真で見たときは、そこまでこなかったけど、現物見たらすごく好きになった。
【高畑】そうなんだよ。前に展示会で見たときに「うわぁ、かわいい」と思った。
【他故】この白とグレーっていいな~。
【高畑】あと、「レンガの壁かっ」ていうこのボタンがね。
【他故】無造作に並べているようでいて、ちゃんとお家のかたちという(笑)。
【高畑】多分、ドアの位置を先に決めているんだよね。キーの配置もこれに合わせて設計しているんだよね。
【他故】それでいて、2本の指で押せる厚さ・大きさになっていて。お見それしましたという感じだね。
【高畑】もうさ、テプラを使えばテープが作れることは当たり前になっているじゃない。これ以上テプラの機能化を進めるのではなくて、シンプルなデザインで機能を最小限にとどめるところで何ができるかというところで、これが一つの答えだよね。
【他故】そうだよね。
【高畑】だから、テープも極力要らないものを付けない。カートリッジが出てきたりもしないし、テープ1本を使い切ればほぼほぼゴミが出ないじゃない。機能も、必要な時に必要な文字が打てればいいでしょとなっている。で、6,800円の値段にして電池でいいでしょうと。結局、何を割り切るかでのきれいなかたちの一つなのかな。
――これは持つ喜びがありますね。
【他故】適度に重いのがいいですよね。ひっくり返らない重さになっている。
【高畑】やっぱりね、ちゃちに見えないように作ったのが偉いよ。割とカチッとしてる。デコボコしている部分もエッジがきれいに出ているから。
【他故】出ているね。
【高畑】「お家」という、ネタとしては分かりやすい設定だけど、それをこのかたちに抑えていて、製品としてのデザインにちゃんと落とし込んでいるところが偉い。
【他故】そうだね。
【高畑】今回新しく出たテープが、北欧チックでかわいいんですよ。
【他故】ただの花柄じゃなくてね。シンプルでもかっこいい。
――確かに北欧ですな。「フォレスト」とか書いてあるし。
【他故】言われれば北欧ですよ。
【高畑】なんか「言われれば北欧」がいいフレーズっぽく聞こえる(笑)。
――おじさんたちが語るとこんな感じですが(笑)、きだてさんならまたひと味違ったことを言うかな。
【高畑】そうだよ、こういうあざとかわいいものに対するきだてさんの意見を聞きたいよね。きだてさんって、かわいいものに対して思いっきりのるときと絶対に許せないときがあるじゃん(笑)。
【他故】そうそう。「いや、これはな~」というときがある。
――前のこはるは「かわいい」とかほめてたから、結構のるんじゃないかしら。意外と乙女心があるから(笑)。
【高畑】それはあるよな~。まあ、これに関しては、甘すぎないデザインがいいんじゃないでしょうか。
――これがギリギリじゃないですか。これ以上かわいらし過ぎると…。
【高畑】そう、前のこはるはおじさんが持つことはないし。最近、ミニマムな家づくりが多くて、あんまりガチャガチャと色のあるものを置きたくないという家も結構多いので。モノトーンだったら大体置けると思うので。
――インテリアとしていいですよね。
【高畑】無印良品の家具とか、そういうのをベースに作っていると、こういうのを置いていても大丈夫。
【他故】これがトリコロールカラーみたいなやつだったら、ちょっとね。あるじゃないですか、赤い屋根で青いお家でみたいなの。
――それこそムーミンのフィギュアとか一緒に置いておけばいいですよ。
【高畑】これ、時々限定版でさ、赤い屋根にして横にキティちゃん座らせておけばいいよ。
【他故】そういうのはアリだよ。
【高畑】色を変えれば全然印象が違うと思うけど、白とグレーだったら家族全員が嫌な顔しないからいいんじゃないかな。
【他故】大人向けの色合いですかね。
――「ヒトトキ」自体がそんな感じのブランドなんですよね。
【高畑】そうですね。他のアイテムはリストあります?
――「こはる」以外には、「KITTA(キッタ)」「暮らしのキロク」「マスリエ」「オトナのシールコレクション」「ガーリーテプラ」「ひより」というところですかね。
【高畑】他のアイテムは既存品なんだね。
――今回の「こはる」が、このブランドを立ち上げて初めての新商品ですよ。
【他故】おっさん的には他のアイテムは甘過ぎるから(笑)、断トツで「こはる」がいいな。
――男性がこれを買うかは分からないけど、家にあっても全然違和感ないですよ。
【高畑】全然使いますよ。
【他故】家族が喜ぶなら、これを買って帰りますよ。みんなで使えると考えたら。
――そう、家族で使えますよね。
【他故】テプラって、意外と女性にはとっつきにくいのか、嫌がる人がいますよね。
【高畑】だから、要らんことさせない。文字を打って、押せば出るという、一番簡単なところになっているのがいいし。
――まあ、メカが苦手な人でも使いやすいということですよね。
【他故】さすがに、キーボードは使えますからね。
【高畑】この、ON/OFFキーがドアになっているあざとい感じがね(笑)。
――ねえ(笑)。
【他故】でも、間違って押されないように、上下に出っ張りを付けているというところが実にうまいな。
【高畑】キーだって、ドアのところだけ一段下がってるじゃない。ちゃんとできてるよね~。
【他故】プリントボタンだって、無駄に押されないように枠が付いている。
【高畑】非常ボタンと一緒で勝手に押されないように枠が付いているけど、それが意匠になっている。
【他故】ちゃんと窓枠に見える。
【高畑】他のフラットな面から比べると、ドアのところだけ一段下げてあるところがさ、何でしょうね、こういうのね。ちゃんと気配りができているデザインだよね。
【他故】「かわいく見えるでしょう」だけじゃないところがね。
【高畑】この直角を出すために、わざわざスライド金型を使うとかさ。カッチリ四角いというのがこだわり所だからさ、わざわざ面倒くさい金型を使っているわけですよ。
【他故】だって、そこが適当だったらさ、この値段つけられないぜ。2、3千円で売っているものでしょって言われちゃうよ。
【高畑】見た目がね。
【他故】見た目がちゃちじゃいかんのですよ。
【高畑】裏からだとこんなにリブが立っているけど、表から見たらほぼ見えない。これも結構頑張っていると思うよ。
【他故】普通もっとボコボコするよな。何も考えずに作ったら。模型とかが好きな人が見たら、これのスゴさが分かる気がする。
【高畑】簡単そうに見えて、意外と難しいことをやっているんですよ。
――見た目がシンプルですからね。
【高畑】これが難しいんですよ。見た目シンプルでこれだけ四角いものを作るというのは、意外とプラスチックの成型も難しかったりするし。これが「四角くなければいけない」という意志がないと、こんなわざわざスライドする金型なんて高いから普通は作らない。
【他故】持った瞬間にすごくいいものだって分かるのは、なかなかないですよ。このタイプの機械で。
――他故さんは、実物を見て初めて「いいな」と思ったんですよね。
【他故】写真を見たときは、正直に言えば全く惹かれなかった(笑)。見た目いいなというのと、触った段階で「これはいいものだ」と。
――確かに、実物を見ると、このサイズ感もあって一目惚れしますよ。
【高畑】物には2つあって、カタログ見てから現物を見たらガッカリするやつと、現物を見たら欲しくなるやつがあるじゃない。「こはる」は後者だよね。
【他故】間違いなくそうだよ。
【高畑】現物のほうがかっこいいというのはいいよね。
【他故】この製品に限っては、ディスプレイするときにできれば現物さわれたほうがいいなと思う。さわったときの気持ちよさとか質感が分かるから。
【高畑】直角だったり長さだったりの精度って、僕らがデザインだって思っているものの何割かは精度なんだよね。四角に屋根をつけただけのかたちなんだけど、それをきちっと作るとこのぐらい質感が出る。
【他故】本末転倒だけど、テプラ機能がなくても買いたくなっちゃう。
――買ってみたらテプラだったという(笑)。
【高畑】何気ないことだけど、例えばボタンと本体の色がほぼ気にならない同じ色というのも大事なことで、素材が違うと同じ色を出すの難しいんだよ。この間取り上げた「テープノフセン」も、プラスチックの色と紙の色がきちっと合っているじゃない。ああいうのすごい大事だよね。異素材なのに同じ色に見えるというのは、結構作るほうは大変なんだよ。それがきちんとできている。
【他故】そうだよね。
【高畑】この絵を描くのは、デザイン系の学生が作品として描いてもおかしくないような、発想としては割とシンプルじゃん。だけど、それをきちんと作り込むことで、質感の高さを出しているというのが、これは作り込んだ人たちがすごいよ。表も裏もスキがないデザインだよ。
【他故】これ、昔だったら、裏に電池ボックスのフタを付けるよ。
【高畑】あー、あるある。
【他故】爪で引っかけて外すやつ。
【高畑】それを裏面全部外すタイプにしてある。
【他故】そこがすでに全然違うよ。
【高畑】壁の中央に割れ目があって、両側からカパッとはめて作ってあるみたいな。
【他故】それが普通ですよ。それで売価を2,980円くらいにしたやつがボコボコ出てくるというパターンですよ。
――それは「許さんぞ」ということですね。
【他故】そういうのはもう要らないんですよ。今の時代は。
――見た目がよくて、使い勝手もいいですよね。
【高畑】悪くないですよ。あえて絞り込んだ機能が、「もうそれでいいじゃん」という気がするので。「テプラ」はどんどん複雑化しているけど、それに対して「こはる」の位置付けはそれでいいと思う。
――デザインが機能を邪魔していないということですよね。
【他故】いいですよ。
本格的すぎるマグネット
――「こはる」が女子向けだったんで、次は男子に人気の「航空機マグネット」にしましょう。
【高畑】これ、どうしちゃったんですか。
【他故】これもサンビーなんですか?
【高畑】「キー印」もそうだけど、どうなのこれ。
――でも、これ人気あるみたい。
【他故】エフトイズっていろんなところで模型やっている会社ですよね。
――食玩で有名なところらしいですよ。
【他故】ですよね。
【高畑】これ、1個いくら?
――780円(税抜)。東急ハンズにいっぱい並んでましたけど、けっこうでかい(笑)。
【他故】1/144ですものね。
【高畑】今、T-4ブルーインパルスを開けていて気が付いたんだけど、ピトー管が別パーツなってるんだ。でも、これだけ?
――別パーツはその機種だけみたいです。
【他故】しかもこれ、水貼りデカールじゃないですか(笑)。
【高畑】本当だ、水シールだ!
【他故】こんなの、ハセガワの1/72スケール作るのと同じですよ。
【高畑】これさ、お皿に水を張って、シールを1個ずつ切り分けてお皿に沈めて、ちょっとしてヌルって動き始めたところで…。
【他故】ピンセットでちょっとつまんでそっと貼って、それで乾かす。
【高畑】これちょっとあれなんじゃないの、誰向けだよ(笑)。
【他故】本格的過ぎですよ(笑)。
【高畑】だって、これ対象年齢15歳以上だもの。
【他故】これは本格的だわ。
【高畑】これ造形もきれいだけどさ、何でまたサンビーがこれをやるのかな。
――使用例の写真がまたすごい(笑)。
【高畑】使用例おかしいやん!
【他故】書類貼るもんじゃないでしょ。
【高畑】まあ、別に書類貼ってもいいけどさ。
【他故】これ、貼ったときに機首がきれいに見える角度になっているんでしょ?
――そうじゃないですか。まあ、航空機マニアは絶賛すると思うけど。
【高畑】航空機マニアというか、食玩マニアでしょ。
【他故】模型が好きな人でしょうね。エフトイズですから、そこら辺は心配していないでしょうけど。
【高畑】何で、ちょっと前のほうにマグネットが付いているのか気になりますよね。模型的にバランスなのかな。
――マグネットが付かない場所だと自立できないんですよね。
【高畑】前に付けているからね。
【他故】立たない位置にマグネットがあるというのも何か理由が。
【高畑】どっちにしても、飛行機って翼の前の方に何となく重心があるから。それにしてもちょっと前っぽいな。
――だから、マグネットでくっつかないとダメよということですね。
【高畑】マグネットで付けたときに、ちゃんとしたかたちになるようになっている。でも、マグネットで付けるとすごく軽快な感じに見えるよね。
【他故】そうね。わずかに機首が上がっていい感じになる。
――マグネットとして使ったときに映えるんでしょう。
【高畑】T-4とF-2があるのね。
――こうして見ると結構でかいですね(笑)。
【高畑】そうなんだよ。
【他故】壁に貼っておくにはでかいですよ。
――マグネットが気になって、書類に目がいかない気がする(笑)。
【他故】この封筒よりでかいですよ。
――これ以上小さいと、細かい部分の成形が難しいのかも。
【高畑】思ったような精度にはならないでしょ。そこまでして精度出したかったんだろうけど、何でこうしちゃったの?という話だよ。
――でも、これいろんなところで評価する声を聞くんですけど。
【高畑】これ、デカールがいろんなところの数字が入っているからさ、T-4のブルーインパルスなんかは、4機ぐらい買ってきてダイアモンドとか組ませないといけないの?
――やはり編隊を組まないと。
【他故】編隊組まないといけないでしょ。
【高畑】そんな感じだよね。
【他故】デカールの貼り方がそれぞれあるんじゃないの。ちゃんと1番から6番まで貼り方が書いてあるよ。
【高畑】本当だ。1号機ごとにちゃんと貼り方が書いてあるじゃん。これは本物だ。
【他故】これは、模型の部分は本物なんですよ。全然玩具として作っていない。本当に航空機が好きな人が納得するやつなんですよ。
【高畑】でもさ、何故このラインナップなの?とか、何故この大きさとかかたちにしちゃったの?とか、謎の部分がいっぱいあるよ。
【他故】しかもサンビーさんはマグネットを売りにしているメーカーじゃないですよね。
――スタンプ関係ですものね。
【他故】これが、先っぽが外れてハンコになっているんだったら別ですけどね(笑)。
【高畑】しかしよくできているよな~。780円で本当にいい意味でいろんなところまでやっちゃってるよね。
【他故】プラモ組んだら、この値段だと無塗装のものしか出てこないし、何でも自分で作らなきゃいけないけど、780円払ったらほぼ完成品のものが出てくるんだったらね。
【高畑】最近、高めの食玩でこういうの増えてきたじゃない。クオリティの高いプラモデルっぽいやつ。それ系の値段だしさ。
【他故】元々エフトイズってそういところだしね。
【高畑】これ何かと共用してないのかな。
――その可能性はありますね。
【他故】(スマホを見ながら)これね、エフトイズに組み立てモデルがあるよ。
【高畑】やはりね。
【他故】でも、組み立てモデルなんだよ。このマグネットは完成品でしょ。
【高畑】これいくら?
【他故】700円って書いてある。
【高畑】組み立て済みで、マグネットを付けてプラス80円なんだ。いいじゃん。
――いいじゃないですか。
【他故】マグネットのところは、ディスプレイ台を付けるところじゃないかな。
――そういう理由なんだ。
【高畑】そうか~、それでここなんだ。
【他故】これ、エフトイズと付き合いが長くなると、もっといろんな航空機が出てくる可能性があるということですよ。
――これは「日本の翼コレクション」って書いてあるから、「世界の翼コレクション」があってもいいのかな。
【高畑】そういうのが出てくればいいんじゃないですか。
【他故】現行の飛行機だけじゃなくて、昔の飛行機だっていくらでも出せるし。
【高畑】いいね。やはり「エリア88」世代としてはね。
【他故】「世界の戦闘機シリーズ」をやるのであれば、「トムキャットが欲しいな」とかリクエストをすれば出てくるんじゃないか(笑)。
【高畑】トムキャットでかいじゃん。でもいいよね。それだったら、僕だったらクルセイダーが好きだな~。機体が細くてマグネットとしてどうかと思うけど、F-104スターファイターとかもいいな。古いのが好きなので、スターファイターとかセイバーが好きなんだよ。
【他故】セイバーいいね~。
――話が尽きなくなってきちゃったな~。
【高畑】全然関係ない飛行機の話で盛り上がるという。でも、多分そういうものだよ。マグネットの話は置いといて、飛行機で盛り上がるツールだよこれは(笑)。そうでしょ?
――そうでしょうね。掲示物を留めながら、それを眺めてウットリするというものですよ。
【高畑】こういうマグネットはみんな使っているわけじゃないから、このマグネットが付いている時点で「他故さんのだ」みたいなのが分かるという。いちいち名前書く必要がない。
【他故】それだったら、F-104が欲しいな。F-104が日本で運用された時は、「三菱鉛筆」っていうあだ名だったから(笑)。
【高畑】そうだよね(笑)。三菱重工がやっている鉛筆型の飛行機だったから。
――それ、リクエストすれば出てくるかもしれないですよ。
【他故】そういう意味では、第1弾を買い支える必要があるので。
――どんどん買ってください。
【高畑】それで、アンケートか何かで「僕はスターファイターが好きです」とか書いてね。
――そういえば、これを気に入って扱っているという文具店の人の話を聞きましたよ。
【他故】エフトイズが販路を広げるためにということもあるかな。
【高畑】そうかもしれないな。
【他故】ただ、模型じゃ置いてもらえないのでマグネットにしたっていう。
――まあ、その可能性もあるでしょうね。とにかく、売る方も気に入って売っていると思うけど。
【他故】サンビーの人は、絶対好きで売っているとしか思えないですよ(笑)。
【高畑】サンビーは、結構変わったの作ってるじゃん。「すしはんこ」とかさ。あと、サンスター文具で販売してた「アッガイ」のネーム印スタンド作ってるし(*製造終了)。意外と模型系はやっているんだよね。アッガイの印鑑ケースなんて、カツ・レツ・キッカのおまけスタンプが付いてるんだよ。
――「スター・ウォーズ」のもそうですよね。
【高畑】「R2-D2」のネーム印スタンドもサンビーが作ってるんだよね。ホログラム風レイア姫のキャップホルダー付きで。
(一同爆笑)
――じゃあ、意外とこういうの好きじゃん。
【高畑】まあ、こうやって盛り上がるぐらいは好きということで。
【他故】「男の子のみなさんは注目して下さい」という感じですよ。
――これ4種類だからコンプリートできるじゃないですか。
【高畑】これパッケージの外から機種が分かるからね。シークレットだと悔しいとかあるからね。
――これ、シークレットにしたら怒るでしょ(笑)。
【高畑】そりゃ怒るでしょ。「ブルーインパルスどうしても揃えたかったのに~」って。
――この値段でシークレットは怒りますよ。
【他故】「1,000円ガチャ」みたいな感じで(笑)。
【高畑】マグネットだったら、「ウォーターラインシリーズ」みたいな世界の艦船やってほしいな。そうするとさ、ホワイトボードに並べるといいじゃん。
【他故】ウォーターラインだといいよね。平べったい状態だから。
【高畑】ほとんどそこが作戦会議みたいになるという(笑)。
【他故】「ここはこう」って進めていくという。
――そういう遊びができますね。
【高畑】普通に護衛艦は700円だけど、空母は1,300円とかになってて。
【他故】戦艦だと2,000円だよ。
――そんなでかいのマグネットで出しちゃダメでしょ(笑)。
【他故】すごいっすよ(笑)。
個性派クリップの最新作
――話は尽きないので、次に行きましょう。ヒサゴの「ストーリークリップス」というクリップです。
【高畑】これは「ディークリップス」もあるし、過去にも色々あったじゃないですか。このヒサゴさんの不思議な感じはいつも「どうなの?」って思うんだけどさ。「肺」のクリップってどうなの(笑)。
【他故】「健康第一」ってタイトルで(笑)。
【高畑】これ、健康診断のときの胸部レントゲンだよね。
【他故】歯と肺と注射ってものすごい組み合わせだな(笑)。
【高畑】何なんだろうね、この不思議なラインナップを作ってしまうあたりは。「海のかっこいい生き物」っていうのもあるよ。シャチとサメとクジラだよ。
【他故】かっこいいって(笑)。
【高畑】まだそれはいいとして、「じょしりょくリップ」だよ。
【他故】で、ちゃんとリップも入っているという。
【高畑】こういうのって、基本的に「どんなかたちか」だけじゃん。まあ、僕的には胸部レントゲンかな。
【他故】これ、手帳にとかノートにという言い方をしているから、こういうスケジュールがありますよというのを考えてるのかな。
【高畑】歯医者行く日に歯のクリップとか?
【他故】「今週歯医者」というところにドーンとやっておいて、どこだろうって。
【高畑】デカすぎだろ!
【他故】週のところにドーンと入れておく。「忘れるな」みたいに。
――健康診断だったら肺とか。
【高畑】年に1回ぐらいしか使わないな。
【他故】インフルエンザの予防接種には注射とか。考えるとしたら、そういうところもあるんじゃないんですか。
――これ、袋にジッパーが付いていて、持ち運びできるという。
【高畑】そうですね。これ袋の中に袋が入っているのね。
――「お菓子のように持ち運べます」と書いてあります。
【高畑】これいくら?
――400円(税抜)。
【他故】それくらいじゃないですか、最近の商品は。
――「ディークッリプス」とかだとみんな銀色でしょ。これはカラークリップがあって。
【他故】あとは、中の種類が見えるというところが違いますね。3種類のクリップがアソートで入っていて、それぞれ色が違うのが見える。クリップって、みんな使うものですかね? 会社で書類をというときにはもちろん使うんだけど、個人で何かをするときって、クリップってそんなに使うものですか?
【高畑】あんまりは使わないな。ホッチキスで留めちゃったりするし。こういう気合い入ったクリップって、むしろメッセージツールかなという気がするよ。はさんで誰かに渡す系だと思うよ。
【他故】「あの子にはこれ」みたいな。
――会社で領収書を付けて請求書出すときにこのクリップでとか。
【他故】経理に回すときに、経理の女の子がかわいいの好きだからそういうのを付けて渡すとか。「音楽好きのためのクリップ」なんかは、音楽教室の先生が子どもたちにプリント配るときに使うとか。
【高畑】それはいいと思うよ。
【他故】そういう使い方が想定できますよね。
【高畑】じゃあ、医者かな。肺のクリップは。
――医者がそれを使ったらシャレにならい気がしますけど。
【高畑】なんかね~。
――「ディークリップス」が出たころは、まだかわいいものしかなかったけど、その後10年近く経って、かわいいの範囲が広がってきていることは確かでしょう。
【他故】ズバリかわいくなくても、キモかわいい的なものとか。
――クリップ系は、このところ目新しいものがなかったですからね。ちょっと変わったものって、最近はふせんの方に行っていたじゃないですか。
【他故】そうですね。金属クリップじゃなくて紙のクリップとか、そっちの素材ですね。久しぶりに変わり種を見たなという気がしますよ。
【高畑】ヒサゴさんは、ベースになっているのがすごくまじめな帳票とかラベルなんだけど、それ以外の商品の遊び方が、腐女子向けの「おとぶん」(*現在は「キャラクターグッズ」として展開)とか、時々不思議なツールを作るじゃん。
【他故】あるよね。スマホの液晶保護フィルムとか。
【高畑】それがイラスト入っていたりするじゃん。
【他故】女性に向けてというのがちょっと違うんだよね。
【高畑】そうなんだよ。そこの感覚の不思議さがね。
【他故】ちょっと不思議な感じという。でも、いいんじゃないかしら。それもまた個性の一つだし。そうじゃなかったら、この「海のかっこいい生き物」なんてタイトルはなかなか付けられないよ(笑)。
【高畑】何揃えで集めたのかよく分からない感じがすごいよね(笑)。この「ココロおどるクリップ」の人のかたちも、すごいものがあるよね。裏の留める部分も必要だからさ。どのようなかたちで留めるのかも難しいよね。留めたときに形が見えなくなるパターンもあるから、うまくやらないと。
――「紙にはさんでも形がしっかり分かる」と書いてありますよ。
【高畑】そこを頑張っている感じはする。
【他故】まあ、でも買っていいかなという気はするね。
【高畑】何か使ってみようかと思うけど。きだてさんは歯医者の看板の写真を撮って集めているから、歯のクリップがいいんじゃない。
――きだてさんはこれですよ。「健康第一」でいいんじゃないですか(笑)。
【高畑】あー、そうだよ。「体大事にしろ!」って(笑)
【他故】それを送ってあげないと。
【高畑】このクリップはいいんじゃないですか。
【他故】変化球で面白いですよ。
【高畑】こういうの1度集めて何かやってもいいよね。
【他故】それぞれのメーカーの考え方の違いが見えて。
【高畑】かわいい系もいっぱいあるけど、同じかわいいでもそれぞれ狙っているところが微妙に違うじゃない。
【他故】そういうの体系的に全部見るとすごい面白いんだろうな。
――とりあえず、きだてさんに「健康第一」のクリップを贈りましょう。
【高畑】そうしましょう。これで手紙でも送りましょう。
【他故】「元気か?」ってね。
消しゴム屋さんが作った消しカス専用クリーナー
【高畑】これさ、使うと気持ちいいんだよ。消しカスを取るのにちょうどいい粘着になっているんだよ。でも、これまだあまり知られてないんじゃないか。
【他故】そうね。何か上手な紹介の仕方を考えればいいけどね。
――これは、他故さん家は絶対使いそうだけど。
【高畑】他故さん消しゴムすごい使うじゃん。
【他故】消しゴムはたくさん使いますからね。
――お子さんがいると、リビングで宿題なんかやっていると、つい消しカスを床に散らかしたりするから。
【他故】だから、子どもには「フォームイレーザー」か「アーチ」しか使わせないんですよ。カスがまとまって捨てやすくなるから。「MONO」はカスが粉っぽくなるから、パッて払われちゃう。「フォームイレーザー」や「アーチ」だと、線になって長くなっていくから、それを「拾え」と言えるようになる。だから、捨てさせやすい。
――なるほど。
【高畑】お父さんのコメントだな。
【他故】この商品だって、「消しゴムメーカーがついに消しカスの捨て方に気が付いた」って話だったでしょ(笑)。
【高畑】そう。消しゴムメーカーが、消しゴムで消すと消しカスが出ることに対して、初めて意識的に何かした(笑)。紙面の間違ったものは消去するけど、その消去したもので汚れた机の上はきれいにしないのかっていう。
【他故】これって、紙の上でも大丈夫?
【高畑】大丈夫、くっつかないよ。粘着をこれ用に調整したんだと思うよ。キングジムの「iコロコロ」もそうだけど、これはくっつけたいけど、こっちはくっつけたくないみたいに、選択的にくっつくようなのりを作るのが、まあ大変なわけですよ。
――ミドリのミニカーがあるじゃないですか。
【高畑】あれよりきれいに取れますよ。
――卓上用の電動クリーナーとかもありますよね。
【他故】あんな大げさなものじゃない。
【高畑】あとね、静か。ブィーンっていわないから。
【他故】電動はうるさいからね。
【高畑】消しクズを取るという行為には非常に有効なんだけど、ただ物として分かりにくいのかな。
【他故】これは、パッケージから出しちゃったら、一生何だか分からないでしょうね(笑)。
【高畑】買った人なら分かるんだろうけどね。
【他故】「リビング学習に」と書いてあるね。
【高畑】机の上とか、あとフローリングの床にもくっつかないので、床に落ちた消しカスを取るのは、他のものに比べたら断トツで取れるよ。ただ、消耗品が出るのはしょうがないけど、消しカスに関しては、さすがシードが作ったクリーナーだからね。
【他故】専用だからね。
【高畑】「ポキステーション」と一緒だよ。オルファなのに刃を折ってくれないオルファが作った、刃を折るための専用のアイテム。カッターの刃を折らしたら、あれより気持ちよく刃が折れるものないよっていうぐらい。
【他故】「消しゴム屋さんが作った消しカスクリーナー」か、いいね。
【高畑】だって、日本で最も消しゴムのことを分かっている会社の人たちが作った消しカスクリーナーだから。
――これは補充用を売っているんですよね?
【高畑】ロールで売ってます。
【他故】パッケージ見るとものすごく説明文章が多いな。色々と心配なところがあるんだろうな。「消しカスのあるところでご使用下さい」っていうのは、なかなかグッときますよ(笑)。ないところで使うなと。
――まあ、遊んじゃう人がいるんですよ。いたずらで髪の毛に付けたりとか。
【高畑】まあ、「P-KISS」なんかでも「空打ちするな」と言っているんだから。
【他故】これは、空打ちしても壊れないでしょう。
――このかたちも考えられたものなんですよね?
【他故】いわゆるエルゴノミクス的なイメージなんでしょうけど。
――握りやすいとか。
【他故】握りやすくて、動かしやすくて。でも、置いた瞬間から何だか分からなくなってしまうのは、逆に残念だなと思いますけど。
――まあ、机の上に置いておくのにはいいかたちだと思いますけど。
【高畑】僕は消しカスはそんなに気にしていなかったんだけど、お母さんたちの話を聞くと、ダイニングやリビングの机で子どもが勉強したあとに消しカスを散らかすのが、嫌な人はすごく嫌みたいね。
【他故】そうだね。
【高畑】消しカスは塩ビでできていたりするから、長く放っておくとくっついて取れなくなる可能性もあるので、それを考えると食卓とかで勉強しているとね。そのあと食事することを考えると、きれいに取れるのはいいんだろうな。
――リビング学習にいいですよ。ナカバヤシの「収納カバン」に入れておけばいいですよね。
【高畑】そうですよ。まあ、こういうのを使って、子どもがきれいにするのを面白がってくれればね。
【他故】「机上に置いてかわいい」と書いてあるよ(笑)。
――さっきの「こはる」じゃないですけど、机上に置いておいて目障りな感じはないですよね。
【他故】目障りな感じはないですよ。
【高畑】「こはる」の前に置くとさ、「ある朝目覚めたら家の前に大きな繭があった」という「ウルトラQ」的な世界になるよ(笑)。
【他故】邪悪なものに見える(笑)。
【高畑】あるいは宇宙から来た謎の物体だよね。
【他故】それをブルーインパルスで偵察に来る(笑)。
――そして、その周りで「ココロおどる」人たちが騒いでいるという(笑)。
【高畑】ジオラマ的によく分からない感じになりましたが(笑)。
(後編:ブング・ジャムの逸品編はこちら)
プロフィール
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。
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